2014年12月23日火曜日

LAPHROAIG 15年

今から5年ほど前、煙と無縁の生活も長くなり、酒ももっぱらワインばかりになっていたある日、突然ウイスキーにぐいっと力づくで引き戻されるきっかけになったのがこのラフロイグ15年。昔のカティ・サークと並んで、いくつかある僕のウイスキーの定点の一つです。
2009年頃の現地購入で、15年というのは現在のラインナップにはないものです。

非常に個性の強いウイスキーで、好き嫌いがはっきり分かれるウイスキーです。
素性は非常にピーティ。世界のウイスキーの中でももっともピーティな部類に入ると言われています。
第一印象は、一言で言えば「歯医者の味と香り」。
クレオソート、正露丸にも例えられますがまさしくそんな感じです。
そしてピリッとしたバイトと塩味。

ところが2口目、3口目と進んでいくうちに新鮮な海の香りと塩気が押し寄せ、郷愁を誘う味わい。爽やかなソーダのような甘みも昇ってきます。
加水でピートアロマが増し、やがてフルーティさとバニラ香が増していきます。
後味はとてもキレの良いもので、爽やかさが残ります。

ところでこのラフロイグ、パイプととても相性がいいのです。特にラタキア入りのイングリッシュミクスチュア。
西洋のお酒のマリアージュは日本のそれとは違って割りと「似たもの同士」を合わせる事が多いようですが、それは掛け算のような効果を生み出すようです。
ラフロイグは強いピート香が持ち味。ラタキアもまた強い薫香が持ち味。その両方が出会うと、突如まろやかでフルーティな味と香りが強調されてきます。まるでマスカットのようです。それはシェリーカスク(シェリー樽を使ったウイスキーはシェリー酒由来の華やかなフルーツの味と香りが漂います)のような華やかなものではなく、熟成と化合によって生まれた抑制の効いた涼やかな素性のものです。

10年との味わいの違いはそれほど大きくはありませんが、15年の方がスモーキーさがまろやかで香りの強さに較べて飲みやすさは増しています。
ノンチル(冷却濾過なし)と言われる18年はまだ味わってません。そろそろ15年が空になるので遠くないうちに飲み比べしてみたいと思っています。

飲みやすいのは水割りです。できれば氷なしで。慣れたらストレートから徐々に加水も香りの変化を楽しめます。ただし香りが開くタイプではありません。



種別:シングルモルト
原産国:スコットランド(アイラ)
容量:700ml
度数:43%
熟成:15年
樽:バーボン


2014年12月19日金曜日

Bill Bailey's BALKAN Blend




ビル・ベイリーズ・バルカン・ブレンド
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント(トルコ葉)、ペリク、ケンタッキー
着香なし
原産国:ドイツ
価格:1800円/50g(2014)


「バルカン」の3つ目はその名も「バルカンブレンド」。
ドイツのDAN tobaccoの製品。元々はイングリッシュミクスチュアレシピ。

開缶すると、ラタキアの薫香と白檀のお香が広がる。他にレーズンのような香りと古い屋敷の応接間のような木の香り。
葉様はやや乾燥気味のミクスチュア。リボンカットはとても長い。
ペリクがブレンドされている。カタログにはルイジアナ・ペリクと書いてある。だとすれば正真正銘のペリク。ケンタッキーも併記しているのでおそらく双方をブレンドしてペリクライクな風味を稼いでいるのかも。
一見してラタキアの印象がとても強い。一応アナウンスでは40%らしいが50%は超えている感じ。

火付き、火持ちともに良好。ちょっと乾燥していたので、一晩軽く加湿してから火をつける。

序盤、ラタキアが喫いたいと思う期待にドンピシャで答えてくれる濃厚でストイックなアロマと喫味が広がる。スロースモーキングを心がければヴァージニアの甘みがほのかに広がる。カタログでは「上質なヴァージニア」とある。サミュエルガーウィスのヴァージニアに比べると奥行きも広がりも乏しい印象。

中盤、ヴァージニアの甘みが引っ込んでさらにストイックに。オリエントのふんわりねっとりとしたアロマが頭をもたげてくる。ところどころコーネル&ディールのアダジオに似てくる。考えてみればブレンドの内容が近い。


終盤はあまり好ましくない。タバコっぽさが増し、かなり気を使っても辛味とエグみが増す。ヴァージニアへのペリク肝心の喫味への影響があまり感じられず、割合的にかなり少ないなあと分かる。ラタキアにしてもアダジオで感じたような明確な主旋律が聞こえてこないままフィニッシュを迎える。

見た目ストイックで荒々しい印象だが見た目ほど強くはない。クライマックスをどこに求めたら良いかちょっと分かりにくいというか、焦点が定まらない感じがする。
ヴァージニアとオリエントがもっと来て欲しいと思うところでなかなか来ない。それがどこか無味乾燥で大雑把な印象を与える。掘り下げようと工夫するのだが底付きが早く、その底はとても乾いていて堅い。

これはヴァージニアの品質あるいはストーブの問題ではないだろうか。どこか適当なところで妥協してしまっている。
価格に比してのブレンド内容は悪くない。イングリッシュミクスチュアを忠実に表現しようとはしている。が、結局のところ「最初の方だけ」というコンチネンタルミクスチュアに共通する限界が見え隠れする。

決して不味いtobaccoではない。ラタキアの喫味は存分に楽しめる。出だしはとても良い。ヴァージニアの甘みやアロマの変化など求めずオリエントを2割増しで加えてみたらきっとぐっと深みを増すのではないか。バランス的に惜しい、そんな風に思わせる葉だった。

舌荒れの可能性は中程度。時間帯は夕食後〜深夜。合う飲み物はウイスキー。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○★○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○○★→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○★○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強







2014年12月18日木曜日

ウイスキーのこと

 自分語りになってしまいますが、僕はパイプと同じぐらい、ワインとウイスキーが好きです。
でもワインはパイプとはあんまり相性は良くないのです。

料理と同じで、やはりワインも美味しくいただくには煙関係は少し断つ必要があります。それで15年間の禁煙期間、もっぱらワインを楽しんできました。

その点、ウイスキーはとてもパイプ(やシガー)と相性が良く、パイプを復活してからウイスキーを飲む機会も自然と多くなりました。

折しもNHKの朝の連続ドラマ「マッサン」の放送や、サントリー山崎シェリーカスク12年(2013)が英雑誌主宰の大会(ワールドウイスキーバイブル2015)で世界一になった影響で、ウイスキーがとても人気だそうです。

「マッサン」はニッカの創立者にして日本のウイスキーの父、竹鶴政孝と竹鶴リタ夫人をモデルにした話です。
学生の頃、J.W.ニコルの文章やお酒の辞典を通じて竹鶴政孝の名前やニッカのウイスキーづくりの哲学に触れて以来のニッカファンで、マッサンも楽しく見ています。

ところで僕が初めてウイスキーに触れた頃はサントリーオールドとスーパーニッカ全盛の頃で、本格的なシングルモルトの山崎が出始めの頃。しかし当時のオールドやスーパーニッカは高級酒、山崎に至ってはもはや無縁の世界、学生にとってはサントリーホワイトやキリンNEWSなんていうのがもっぱらでした。

もっともそれらの安価なウイスキー()は水割りにして辛うじて飲めるようなものでお世辞にも美味いとは言い難いものでした。これでウイスキー嫌いになってしまう友人もけっこういました。


僕が初めてウイスキーをはっきりと美味いと認識したのは「カティ・サーク」というブレンデッド・スコッチでした。

このウイスキーはとてもスムーズで品の良いお酒で、初めて口にした時はなんと美味い酒なんだと感動したものです。
マイナス10度を下回る冬の厳しい盛岡での生活、寝る前にはこれをストレートであおってから眠りに就いたのを今でも覚えています。
現在のカティサークはやや味が落ちたと言われていますが、それでもウイスキーが初めての人におすすめしたい、素晴らしいウイスキーだと思います。

カティ・サークでウイスキーの味を覚えた僕は、その後学生の身分でも買える手頃な値段のウイスキーを探し続け(当時は輸入酒と国産酒の価格差が倍以上あったため)、「ハイニッカ」「ブラックニッカ」そして「ピュアモルト」と立て続けにニッカのウイスキーにハマってゆきました。


Japanese Whiskyはその頃に比べたら本当に美味くなりました。これは日本酒にも焼酎にも、そしてもちろん本場のスコッチにも言えることなのですが、銘柄は同じでも30年前とはまるで別物のウイスキーも少なくありません。

中でもニッカやサントリーのピュアモルト群は、本場のスコッチモルトにひけをとらないほどの深い味わいと個性を持つようになりました。


ワインもウイスキーも好きですが、詳しい訳でもなく細かいテイスティングやソムリエを気取ったようなことには興味はありません。
ただパイプ葉の事についてあれやこれや書くようになって以来、お酒についてもせっかく飲んで美味しかった記憶をただ消えるに任せるのが惜しく、文章にして残しておきたくなりました。

そんな訳でパイプtobaccoのレビューに紛らせながら、飲んだお酒についてもウイスキーを中心に少しずつ書いてみようと思います。

さほど珍しい(高い)お酒には巡りあう事もないかもしれません。
それほど気の利いたレビューが書けるとも思いません。
まあそれはそれとして思い出と出会いを大切に一期一会を書きたいと考えています。







2014年12月16日火曜日

Samuel Gawith Commonwealth



サミュエル・ガーウィズ・コモンウェルス
使用葉:ヴァージニア、ラタキア
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)
ド直球勝負のラタキアブレンド

ヴァージニアとラタキアが50/50のミクスチュア。
ダンヒル965と良く似たキャラクターを持つが、965の方はオリエント葉が配合されその分ラタキアが若干少なめになっているのに対して、コモンウェルスはオリエントは使われていない。

開缶するとラタキアの薫香がもわっと立ち上る。
リボンカットは太め、長めでとてもしなやか。上質なミクスチュアだとひと目で分かる。
火付き、火持ち共に申し分ない。

序盤、ラタキアの旨味と薫香が立ち上りながらマイルド&スムース。
中盤、ヴァージニア特有の甘みがぐんぐん増してくる。思ったよりはラタキアは主張しない。
終盤、喫味、アロマとも殆ど変化なく終了。甘みの余韻。

ダンヒル965に良く似たキャラクターだ。
単純に比較すれば、喫味の奥深さと甘やかな風味はコモンウェルスに、喫味のシャープさとアロマの豊かさはダンヒル965に軍配があがる。

特に終盤、葉がストーブされてからの差はかなりあって、喫味の方はコモンウェルスに使われているヴァージニアの質の良さがとても良くあらわれる。本当に素晴らしいヴァージニアだと思う。サミュエルガーウィスのヴァージニア特有の、淀みのない滋味ある甘みは気持ちをゆったりとさせてくれる。
ダンヒル965はそれ比べると、若干ヴァージニアの質が落ち雑味も多く、特に終盤の喫味を上手に引き出すのがとても難しく、うっかりすると惰性に陥りがちになる。

その分アロマの方は965はヴァージニアの弱さをオリエント(ターキッシュ)が補って余りあり、複雑さと新鮮さ、中庸を両立させた形容のし難いアロマを提供してくれる。これが僕が965をやめられない理由の一つになっている。コモンウェルスの方はアロマに特段の変化が起きず、終了のサインが全く分からないことさえある。逆に言えば素直な性格。

「バルカンブレンド」と称する人もいるし、カタログでは「バルカンソブラニー」と対比させている。ソブラニーはともかくこれをバルカンとするならダンヒル965もバルカンと呼んでいいだろう。そして965の方がよりエキゾチックである。
故にコモンウェルスがバルカンかどうかはどうでもいい。むしろ純粋かつ上質この上ない典型的なイングリッシュミクスチュアだ。そしてそれでいいと思う。ラタキアがヴァージニアの甘みを、ヴァージニアがラタキアの旨味を最大限に引き出してくれているのだから。同社のGrouseMoorや、Perfectionよりもさらにヴァージニアを楽しめる直球勝負のtobaccoだ。


時間帯は夕刻から夜。
舌荒れの可能性は中程度、ニコチン酔いの心配はない。
合う飲み物はウィスキー、水、コーヒー。



  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○○★○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強






2014年12月13日土曜日

ヤルヴィの風景

久しぶりのオペラシティ。

12/10~14、武満ホールにてパーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルブレーメンのブラームスチクルスをやっています。4つの管弦楽曲、4つの協奏曲、4つの交響曲を4日間で時系列に。
本当は全て行きたかったのですが、まあそういう訳にも行かず、特に交響曲第2番が聴きたかったので二日目の公演に。

一曲目はハイドンの主題による変奏曲。
続いてクリスティアン・テツラフ演奏のバイオリン協奏曲。
技巧と強烈なパワー、ダイナミックさと繊細の緩急。特に第一楽章のカデンツァは非常に素晴らしいものでした。不勉強にしてオリジナルかどうか分かりませんが、サラサーテを意識したような非常に技巧的なフレーズにあふれていました。

アンコールはバッハ。
アンデルシェフスキといいテツラフといい、21世紀に入って明らかにバッハの解釈がまた新時代を迎えたのだということを印象づけてくれる演奏でした。


さて、ヤルヴィ&ドイツカンマーフィルの交響曲と言えばしばらく前にベートーヴェン交響曲第5番の冒頭の解釈が斬新で話題になりましたが、カンマー(室内楽)という名が示す通り現代のレベルでは比較的小編成のオーケストラが特徴で、やや軽くスピード感とちょっとヒップホップのようなノリもあっていかにも21世紀風。
当たり前といえば当たり前ですが、当代のクラシック音楽家は、指揮者も演奏家もみんなロックやジャズ、ソウルをクラシックと同じように聴いて育っているし、かなり詳しい人も多く、カンマーフィルの演奏家やヤルヴィにもそのバックグラウンドはしっかり出ています。

音楽におけるタイム感ビート感というのは我々の世代が音楽に対して持っている共意識の一つで、これをなくしては音楽が成立しないという時代であることは間違いありません。
クラシックもそれと無縁ではいられないわけで、やはりカラヤン以前と以降では違うし、最近の演奏家はさらにそのリズム感覚は卓越してきています(bpmが正確なビートを刻むという意味ではありません、念のため)。


今回のブラームスも聞き覚えのある重厚で気難しさの漂うのとはちょっとまた違う、スピードとビートにあふれたものでした。
もちろん美しく繊細な情緒性により磨きがかかっていました。

しかしその他に、特に交響曲の中にものすごく何かを言いたげな感じがありました。
言葉にするのはとてもむずかしいのですが、ある風景が何度も何度も繰り返し出てくるのです。
普段CDなどで他のブラ2を聴けば、当たり前の解釈としてブラームスがこの曲を作曲した南オーストリアの湖畔をイメージできます。
木々や草花の囁きや鳥の声、そして風の音、水の匂い。

ヤルヴィの解釈はとても厳密で考証性の高い演奏が特徴です。
しかしなぜかその「南オーストリア」がほとんど出てこなかった。
その代わりにベルルーシやウクライナの草原のような、広くて明るいがなぜか物悲しい光景が広がったのです。

彼はエストニア生まれ、ソ連時代のエストニアの音楽学校を出た後、アメリカのカーティス音楽院やバーンスタインの元で修行していますが……。
ヤルヴィとオケの面々の脳裏に、言葉にならないメッセージとウクライナの平原の原風景が広がっているのを感じたのは僕だけでしょうか。

もう一つ気になったのは、三〜四楽章あたりになるとどことなくマーラー的な狂騒に似た雰囲気すら感じられる箇所がいくつかあったという点です。
もちろんこれは僕にとっては好印象です。
その時代の新しい音楽とは何だったのか、それをブラームスを通じて現代的に我々に伝えてくれるものでした。
もちろんもしもベートーヴェンがこの演奏を聴いたとしても、やはり前衛的だと感じたでしょうし、そしてブラームス自身ベートーヴェンを敬愛しながらも新時代の旗手としてその古典主義的な枠からどうにか抜けだそうとしてもがいていた痕跡を彷彿とさせるものでした。

ヤルヴィの解釈は本当に面白いです。


演奏曲目

12/11[木]19:00

ブラームス:
  • ハイドンの主題による変奏曲 op.56a 
  • ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 
    (ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ)
  • 交響曲第2番 ニ長調 op.73 



[ソリストアンコール]クリスティアン・テツラフ(Vn)
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005より「ラルゴ」

[オーケストラアンコール]
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第3番 ヘ長調
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番 ト短調

2014年12月10日水曜日

藝術の再誕




モダンアートの息の根が止まろうとしている。
葬送行進曲が聴こえる。
葬列が見える。

それは惜しまれることも許されず
墓場にすら向かうことも許されず
ただ焼却炉へと向かっている。

だが喜べ
藝術は人間の手に取り戻されようとしている。

人間が本来神から授かり持つ
美や哲学への憧憬に応える時が来た。

永続性に憧憬し
善に憧憬し
美に憧憬し
深層に憧憬し
哲学に憧憬し
精神性に憧憬し
宇宙に憧憬し
多様性に憧憬し
本質に憧憬し
藝術進化の使命と信頼を取り戻せ。



2014年12月9日火曜日

路傍の石


愛も想いも、笑顔なくしては伝わらない。

それを人に伝えたければ微笑みなさい。

もしも私が微笑んでないならそれは、あなたを試しているから。

愛を受け取る準備ができてない人にとっては、私が愛に溢れているようには見えない。

笑ってるようには見えない。
いや、私の姿さえ見えないだろう。

嫉妬や妬みの炎を燃やしている人にも私の姿は見えないだろう。

なぜなら私は神だから。
私の愛は神の愛。

路傍の石。
気付けばみえるが
気づかない人にとっては
いてもいなくても同じ。

神への愛に満ちるなら
私の姿が見えるだろう。

愛の炎があるのなら
私は微笑んでいるだろう。

自分だけが愛されることを願っても
決して神の姿を見ることはできない。

愛を貫いて初めて
私はあなたを愛するだろう。

そうでなければ
私はただの、路傍の石。

2014年12月8日月曜日

Samuel Gawith BALKAN Flake



サミュエルガーウィズ・バルカンフレイク
使用葉:バージニア、ラタキア
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)


生葉の芳香は爽やかでややピート香。カルダモンや胡椒のような芳香も感じる。ラタキア特有の香りは抑えめでバージニアのストーブの香りが勝っている。葉様はモイスト。

火付き、火持ちは申し分ない。サミュエルガーウィスのフレークの中でもSt James Flakeにもまして火持ちは良いほうだと思う。ほぐさずにフレークのまま折って捻って詰めるのが風味も壊れなくていいと思う。

序盤、スムーズ&ライト、そして爽やか。ラベルに「Deliciously Cool」とあるが芳香も喫味もクールだ。ラタキアのキャラクターはそれほど強くなくピート香に似たアロマ。スコッチを連想させる。
ほんのりとした甘みも感じるが、ラタキアブレンドの範囲内。

中盤、爽やかなスパイシーさに交じって甘みが少しづつ増してくる。アロマはそれほど個性のあるものではないが少しずつラタキアのキャラクターが増してくる。

終盤、それまで無個性に近かったアロマにラタキアの薫香と発酵香がどんどん顔を出してくる。しかしあくまでも爽やかで軽やかな甘さは失われない。いや、そもそもこれはラタキアなのか?

このレビューは初冬に書いているが夏向きのtobaccoだと思う。やや涼しくモイストな避暑地の木陰を散歩したくなるようなそんなイメージ。

ところでなぜ「バルカン」なのだろう。ネット上では「バルカンソブラニー」という伝説のtobaccoがその名付けの大元であるという情報が多い。しかしソブラニーのルーツがバルカン半島だからバルカンであるという話もあくまでも「そういうお話」であって、バルカンスタイルの理由を特定するための定説ではない。

スタイルとしてはラタキアとオリエント(主にマケドニア産)、バージニアのミクスチュアをそう呼ぶというが、そうであればイングリッシュミクスチュアの多くはバルカンスタイルになってしまうし、そもそもフレークでバージニア+ラタキアのみの「BALKAN」の説明にはなっていない。
故にバルカンスタイルの定義は未だ非常にあいまいなまま適当だ。

僕も適当なことは書きたくないので断定はもう少し調べてからにしたいが、「バルカンブレンド」という呼び名はもっと古くオーダーミクスチュアの時代に既に存在していたという不確かではあるが得心のゆく情報と自分なりの推測を元に、サミュエルガーウィズのレシピにはもっと確かで理屈の合う意図があると踏んでいる。

BALKANフレークの個性として押さえておきたいポイントとしては

  1. サミュエルガーウィズ(SG)のフレークの中でとりわけ爽やかなスパイスイメージがあること。特に胡椒やカルダモンのヒントは強い。
  2. 生葉芳香に、他のSGの葉にはない「ピート(泥炭)香」がすること。ストーブにピートを使っているのはほぼ間違いないだろう。
  3. 逆にラタキアの個性に乏しいこと。
  4. レシピにオリエントが含まれていないこと。

がある。

事実だけ見ればスパイスもピートもバルカン半島には全く関係ない。
ラベルにはエーゲ海を中心にギリシャからトルコにかけての地形があしらわれているが、バルカン半島の中心とは微妙にずれているし、ラタキアの主産地であるキプロスは表示さえされていない。
けれどもこの爽やかさとクールな味わいは確かに北のものというよりは南の風を感じるし、伝統的なイングリッシュブレンドよりはずっとオリエンタルな風味(軽さ)を醸し出している。少なくともイギリス人を含む北ヨーロッパ人が、オリエントやラタキア、スパイス風味の葉をエーゲ海のイメージに重ね合わせ、これらから醸しだされる爽やかで軽やかな個性を「バルカン風」と呼んでマイミクスチュアをオーダーした時代があったとしてもさほど不思議ではない。
それを最初にパッケージネーミングしたのがバルカンソブラニーであることはともかく、時を経てオリエント葉なしでバルカン風味を復活させるというサミュエルガーウィスの意気が込められていたとすれば……。

僕はこのBALKANに使用されている「ラタキア」と称している葉は、実はオリエント葉を使用せず(ラタキアはオリエント葉を使用する)、つまり実はラタキアではなく、ヴァージニアやバーレイを独自製法で(例えばらくだの糞の代わりにピートで)ラタキア風に仕上げたのではないか?と、これも無責任な憶測に過ぎないが、ピーティなアロマと味わいからはそんな風に読み取れるのだった。

もちろんそんな面倒な妄想をしなくても純粋に十分に美味いtobaccoだ。

ともかくも初めてサミュエルガーウィズのフレークを試してみたい人、ラタキアがニガテな人にもとっつきやすいと思う。舌荒れの心配はほぼない。St James Flakeと並んで常喫性は高い。
時間帯はデイタイム〜夜。合う飲み物はコーヒー、ウィスキー、水など。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○○★→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強




2014年12月4日木曜日

Davidoff Royalty Mixture





ダビドフ・ロイヤルティ・ミクスチュア
使用葉:オリエント(トルコ葉)、ヴァージニア、ラタキア
原産国:デンマーク(オーリックOEM)
価格:3800円/50g(2014)

オリエント系ミクスチュアの上質なtobacco。


開缶すると、やや厚めの中蓋の下に非常にきれいなリボンカットが詰められている。
生葉の香りはラタキアの香りだがそれほど強くはない。それ以外の着香は感じられずいたってマイルドだ。
葉様はオレンジバージニア、明るいオリエント葉が目立ち、そしてほんのり黒いラタキア。全体的に乾燥しており、パイプに無造作に詰めても火付き火持ち共に非常に良い。




喫味は終始、スムース&マイルド。
序盤はバージニアの程よい甘みとtobaccoらしいほのかなアロマが支配する。バイトもなくあからさまに主張するものはない。
中盤も喫味は変わらずマイルドだが、アロマに次第に香ばしさが増してくる。おそらくオリエント葉の個性であろうシガーライクなアロマが交じって陶酔感が顔を覗かせる。
終盤になってやっとほんのりとラタキアがキャラクターを主張し始めるが、終始やさしいしかしちょっと乾いた喫味とアロマが最後まで続く。
終焉の余韻は殆どない。


ところで国内のネットレビューを読むとこのtobaccoの評判の悪さが目立つ。おそらく価格に比して味わいの個性がなかなか感じられないためではないかと思われる。

実際にはシルキーで上品な美味いtobaccoだ。
価格以外は全ての人に薦められる。
パイプ初心者も上手に美味しく喫えると思う。しかしそのポテンシャルは初心者向けというよりはシガーもパイプも楽しめる上級者向きだろう。
ただし、日頃バニラや着香キャベンディッシュなどどぎついパイプ葉に慣れてしまっていると、ワンボウルではこのtobaccoの魅力はなかなか見えづらい。

パイプ喫煙者向けというよりは、普段はダビドフのプレミアムシガーを嗜む人へ、たまさかのパイプスモーキングタイムのために用意したのでは?ともとれるほど、シガーにも通じるスムーズさ、アロマの抑えの効いた心地よさ。もちろんシガーのそれに比べればほんの心持ち程度だが、ルームノートにも確かにシガーに通じる軽やかさ、華やかさがある。それは着香で得られるものではなく、明らかに葉そのものの上質なチョイス、ブレンドによるものと思われる。
それは良くも悪くもシガー的アプローチであり、それによって仕上がるマイルドさと上品さは、確かに日頃からパイプオンリーで暮らしているといささか物足りなさを感じるかもしれない。

しかし燻らすごとにダビドフのレシピの底力を感じるのは確かだ。
それは明らかにオリエント(トルコ煙草)の配合にあると思う。
ボウルを重ねる毎に、実はオレンジバージニアよりもずっとオリエント葉が主張し、このtobaccoのキャラクターを支配していることに気がつく。

エルキュール・ポワロの中にトルコ煙草を喫う男の話が出てくる。男が喫うトルコ煙草はジタンやゴロワーズのような黒煙草ではなく、ロイヤルティミクスチュアに使われているような浅煎りの黄金葉である。そしてこのゴールデンターキッシュはtobaccoの黄金時代、最上級シガレットの一つだった。

ロイヤルティミクスチュアの欠点はとにかく国内価格が高価だということ。プレミアムシガーと比べれば安いかもしれないが、パイプ葉の中では飛び抜けて高い。
一喫の価値はあるがパイプスモーカーに広く支持されるとは思えない。もちろんダビドフにとってはそれでいいのだろう。

ニコチン酔いの心配はなし。
よほど乱暴に喫わない限り、舌荒れの心配は皆無。
常喫性はとても高い。
合う飲み物はブランデー、ウィスキーなど。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○★○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○★○○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○○★→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○★○○○○→強

2014年11月25日火曜日

政治的発言

少し有名になると、その知名度を利用して政治活動や政治的発言をしようとするクリエイターが後を絶たない。

海外の、それも白人のアーティスト(という名のミュージシャン)が、「アーティストも声をあげるべき」という主張をするものだから、日本人のアーティストもどうもそれを盲信して「そうだそうだ」となっているようだ。

でも僕は違う。

自分の頭で考えよ。

政治家は政治でモノを言い、世の中を良くしてゆこうとする。
農家はより良い作物を作って、世の中に貢献する。
ものづくりをする人は、より良いものを作って世の中を良くしてゆこうと努力している。

芸術家だって、芸術で世の中を良くしている。


政治的な活動で世の中を良くしていこうというなら、それは芸術家ではなく、政治家だ、運動家だ。
運動家としてなら、運動をすればいい。


だから僕は絵ではなく政治的に影響を与えようとする芸術家は好きじゃない。

芸術家はボロクソに批判されるほど、ノンポリのフリをして、作品にそれを打ち込めよ。

武器や破壊兵器を丹念に精密にパラノイヤ的に描いておいて、口では平和なサヨクだなんて二律背反もいいところ。

そんなに武器を取るのがイヤなら武器を描かなければいい。
それが政治的表現というもの。

本業を越えての運動的政治的発言とは怒りであり、権勢欲、現実的思想統制の影響力の行使である。
それが作品に現れるのだ。
だから武器など描くのだ。

本人は切り分けているつもりでも、必ずそれは作品に出る。
怒り、力み、皮肉、権勢欲、顕示欲。
それはその時はバレないかもしれないが、長い年月の間に、必ずその意図が滲み出て人々が気づくのである。

それは時代遅れの価値観でしかない。
不変の芸術を作り出すためには、それは足かせにはなっても、プラスには全くならない。

芸術は時空を超えた価値観を有してなければならない。

その時の感情や為政者に腹を立てたところで、芸術には何一つ良いことはないのだ。



2014年11月21日金曜日

ぼくらはもどってきたよ



「ぼくらはもどってきたよ」F50 (910×1167) /Oil on Panel(2013)/Chihiro SATO サトチヒロ
パリ国際サロン2014展示

¥1,000,000(税、額装別)

2014年11月19日水曜日

Samuel Gawith St James Flake




サミュエルガーウィズ セント・ジェームズ・フレーク
使用葉:ヴァージニア、ペリク
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)


締め切りが近くなるとパイプを咥えている時間が増える。
もっとも本当に集中している時はパイプどころではなく、火が消えたのに気づかず咥えっぱなしになったり、口から離して置きっぱなしにはなったりはするのだけれど、手を休めた時の思索の時、作業の脇役としてはパイプの煙は欠かせない。

そんな時には、火持ちが良くて主張しすぎない、それでいて手軽で上質な味わいを持つ葉が欲しくなる。
重要な常喫葉はダンヒルのマイミクスチャー965。

ただリボンカットされているミクスチャーは詰めるのはラクだけど、他の事に気を取られてぞんざいに喫っているとあっという間にボウルが終わる事が多い。タンピングもややせわしない。

そんな時フレークなら、火付きにはややコツはいるものの、火持ちは気を使わずに済むので重宝する。もちろんフレークによって火持ちが異なるけれど。

サミュエルガーウィズのセント・ジェームズ・フレークを試してみた。
「セント・ジェームズ」とは、ペリクの発祥の地(アメリカルイジアナ州セント・ジェームズ・パリッシュ)。
サミュエルガーウィスの定評あるストーブド・ヴァージニアにペリクがブレンドされたフレークだ。ある情報によれば、このセント・ジェームズ・フレークに使われているペリクは一般に「ペリク」と称して使われる「ケンタッキー」ではなく正真正銘のルイジアナ産ペリクであるという。現在オリジナルのペリクはアメリカン・スピリッツ社が独占しているので、サミュエルガーウィズ社がどうやって入手しているのか分からないし、この情報自体どこまで信頼して良いか分からないが、一応そういうことになっているらしい。


葉様は褐色、サミュエルガーウィズならではのやや粗めのフレーク。香りは例によってプンパーニッケル風だがそう強くはない。ペリクの発酵臭も生葉からは殆ど感じられない。
開缶直後はモイスト。
乾燥時間を稼ぐ代わりに今回はほぐしてレディラブドの状態で味わう。詰め方はやや緩めが良い。

サミュエルガーウィズのフレークは全般的にモイストで火付き火持ちともにかなり神経を使うものが多い。
やっとそれにも慣れてきて、そのまま折って詰めるべきか、ほぐすべきか、はたまたキューブ状にしてしまうかの区別が直感的にコツがつかめるようになってきた。

一旦ほぐしてしまえばフレークもリボンカットも喫煙時間は同じだろうと思うのだけれど、どういうわけかフレークの方が長持ちするところが不思議だ。サミュエルガーウィズの葉特有の湿度やほぐし具合にもよるのだけれど、本当にゆっくり燃えてくれるから、例えば昼食後に詰めたワンボウルが、時折り休みを入れながら日暮れまで持つということも珍しくない。リボンカットのミクスチュアではこうはいかない。

喫後感を一言で表せば「傑作」。

序盤、火付き、火持ちは申し分ない。すぐにブラウンヴァージニアの優しい甘みとつんとした熟香のアロマが包み込む。すぐに「美味いtobaccoだ」ということが分かる。
スムーズで明らかなパンチやキックはないが、決して甘ったるいtobaccoではなく、刺さることのない程よい渋さと熟成香が印象的。火持ちを気にして吹かすとややエグみを感じる瞬間あり。

中盤、長いクライマックス。ペリクと分かる主張を感じる。といっても決してヴァージニアを押しのけるようなものではない。スパイシーで馥郁と香りが立ってくる。いつまでも続いて欲しいと感じる。

以前に何度も繰り返し書いていることだが、ペリクの味わいの存在意義はペリクそのものにあるのではなく、ヴァージニアとブレンドされた時に最大の輝きを発する。
それはペリク自体の味としてではなく、ヴァージニアの味わいが何十倍にも強調されて入ってくるのだ。それは「爽やかさ」であり、同時に「熟成された旨味と芳香」を提供してくれる。

このセント・ジェームズ・フレークはまさにペリクの真骨頂と言えるもので、サミュエルガーウィズの丁寧にストーブ(高温乾燥)〜圧縮された熟成葉と出会うことで、他では決して味わうことができない、透明感に満ちた最高の滋味を提供してくれている。

終盤、さらにその勢いは加速される。なんと深い発酵の芳香。ボウルの中でさらにストーブが進み、そのアロマの心地よさに何度も深く吸い込みたくなる衝動に駆られ、ようやくそれを抑える。
透き通った青空と木の葉が香る風を感じながら、最後の一葉まで丁寧に燃やして深い満足を持って終了。

ペリク&ヴァージニアの比較対象として、すぐにラットレーのマーリンフレークやオールドゴーリー、スリーナンズ等が思い浮かぶが、価格、品質ともにセント・ジェームズ・フレークの圧勝である。

僕にとっては間違いなく常喫用tobaccoのベスト3に入った。

この旨さを支えるものは、サミュエルガーウィズが使用するヴァージニアがもともと上質であること、ストーブが絶妙なこと、そう多くはないだろうけれど上質な本物のペリクの的確なブレンド比率、圧縮熟成による角のとれた柔らかさによると感じる。
何より強いのは、今でも頑なにイギリス本国で昔ながらのレシピと手作業で生産が続けられているという点だ。
スコッチで言えばアイラのシングルモルト、日本酒で言えば老舗造り酒屋の、木桶仕込みの純米地酒に相当する。とっつきは良くないかもしれないが、知れば珠玉の味と魂の真髄に気づくのにそれほど時間は要らないし、その味は記憶にしっかりと残り、手放せないパートナーになる。

ニコチン酔いの危険性は高い方だと思う。延々と吸い続けるより、時折意識的に休みながら火をつけると良い。この休みもまたこのtobaccoの旨さを引き立てる。アロマをしっかりと感じながら喫うtobacco。舌荒れの危険性は中程度。

合う飲み物はコーヒー、紅茶、その他。
時間帯はデイタイム。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○★○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○○★○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○★○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○○★→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強





2014年11月16日日曜日

壁のち祈り

「甌穴の片隅にて」/F40(一部)/油彩/2014


壁は怖い。
でも壁は必要。
壁がない方がもっと怖い。
もちろん越えなくちゃならない。
壁を越えてこそ芸術。
壁を越えてない芸術などない。

壁が見えると、今度こそ越えられないんじゃないかと不安になる。
やっぱり才能なんかなかったんじゃないかと悲観する。

何日も何日も絵の前で筆を持ったまま硬直し
この構図にしたことを後悔し、この題材にしたことを後悔する。
自分が消えてしまいそうになる。
力を振り絞って立ち向かう。
壁を越えてやると。

でも、壁は越えようとしても越えられない。
壁を越えられるのは、無心。
ぶつかって、伸び上がって、飛び上がって
無力感にうちひしがれ、進退極まって、覚悟し、無心に戻った時。

祈りと魂が意図や意識に勝った時。
神が僕に成り代わり、筆を進めてくれた時。

その時、僕の絵は祈りになる。
だから僕の絵は僕のもので僕のものでない。

神のもの。
そして見ている人のもの。
祈りのための道具。
神的意識のための使い。




2014年11月13日木曜日

AVO Serie XO Quartetto Notturno Tubos



アヴォ・セリエ・XO・カルテット・ノットルノ・チュボス
フィラー:ドミニカ
ラッパー:ドミニカ
製造国:ドミニカ共和国
サイズ:127×17(ペティコロナ)
種別:プレミアムシガー
喫煙時間:約40分

しばらく前にシガーショップで「非ハバナで、モンテ・クリストの3番の代わりになるものでデイリーになりそうなもの」という注文を言ったら薦められたもの。

XO Quartetto Notturno のXOはブランデーの格付けと同じ。ダヴィドフ系列の常でワインやブランデーに倣った商品区分。
Quartetto Notturnoはイタリア語で音楽用語、直訳すればカルテットによるノクターン、つまり四重奏による夜想曲のこと。これもイメージ戦略が上手なダヴィドフらしいし、AVOの創始者であるアヴォ・ウヴェジアン(アメリカのジャズ・ピアニスト)とどことなくつながりがあるようなないような、ぼんやりと想像を助けてくれるような名前だ。ジャズのカルテットによるラブソングか、弦楽四重奏による夜想曲かは分からないけれど。
Tubosはチューブのことアルミ製のチューブケース付きで買う事ができ、このまま持ち歩くことができるようになっている。

数ヶ月の放置(一応保湿管理はしていたので熟成は少しは進んだかも)の後、火を灯す。
序盤、吸いがやや固い。一度パンチャーで開けた穴をカッターで切り直す。
着火直後から品の良いマイルドな喫味、ほんのり甘みはあるがそれほど強くはない。スムース&ライト。ふくよかな熟成香を伴うやさしいアロマ。

中盤、アロマ、喫味ともに穏やかで上品、癖がない。浅煎りの美味いブラジルコーヒーのブラックのような爽やかな苦味。途中、何度かナッツを感じるがクライマックスというほどでなく「来るかな?」と思うと引っ込んでしまう。そのまま淡々と進んでいく。

終盤、スパイシーさと苦味が少しずつ増しては来るが荒々しさやキックは全くない。終始抑制が効いていて穏やかだ。ラッパーの温度が上がりエグみを感じたところで終了。アロマは最後の最後まで穏やかな熟成香を漂わせ名残惜しい。

総じてパンチに欠け印象が薄い。40分という時間もやや短いのだがどことなく物足りない。ただしアロマは素晴らしいものを持っている。Quartetto Notturnoの名の通りどこまでも優しく、気がつけばいつのまにか音楽が終わっている、もう少し続けばいいのに……そんな感じにさせてくれるシガーだった。

価格の面からもかなり良心的なシガーだと思う。もちろんモンテ・クリストには比べるべくもないが、コストパフォーマンスを考えた時には損はしないと思う。
さほどのパンチを求めず、時間があまりない時やムードやアロマを楽しみたい時にいい。
合う飲み物はウイスキー水割り。

価格:1200円/本(2014)

2014年11月5日水曜日

Peterson Irish Flake





ピーターソン・アイリッシュ・フレーク
使用葉:ヴァージニア、バーレイ種、ケンタッキー
原産国:デンマーク(OEM)
価格:1750円/50g(2014)

ピーターソンはアイルランドのパイプメーカー。パイプ葉も出していることは知っていたけれど横目で眺めていただけ。
たまたまフレーク葉を切らしていた時に、少し深めの何かを欲しいなとタバコ屋さんに入ったらこれが目についたので試してみることにした。


葉様は綺麗に揃ったシート状のフレーク。色はとても濃い褐色。深煎りにストーブされているとのこと。生葉の香りはとてもフルーティで赤ワインのような渋い甘い香りがする。加香はされていない。


当初、あまりに綺麗に揃ったシートだし湿気もそれほどでもないので、ダンヒルフレークのように喫えるかなと思って無造作に折って詰めて喫ってみたが、喫味はパンチがあっていいが火付きや火持ちがどうも微妙にうまくいかない。
カタログには「よく揉みほぐして」とあったのでそれで試してみると、火付きも火持ちも良いが今度は味がぼやける割に燃えが速く、またニコチン感が急激に来すぎてこれもなんだかしっくり来ない。

そこで奥の手、大きめに縦に裂いてキューブで喫うと、初めてこのtobaccoの良さを存分に味わうことができた。この手の葉はキューブにしてじゃらじゃらと詰めるのが本当によく合う。キューブはそれほど細かくなくていい。(自作キューブカットについてはこちらを参照
ノーマルな19cmボウルなら、シート半分ぐらいがちょうどいい。

序盤、深煎りされた葉らしい渋めの煙。甘みは思ったより少ないが癖のない喫味。アロマは熟成香が嗅覚を刺激する。発酵葉とストーブ葉のハーモニーを感じる。
中盤はニコチン感が非常に強くなる。喫味が爽やかでいながら時折こっくりと心地よいアロマに包まれるので調子に乗ってふかしていると頭がクラクラしてくる。
あまり火持ちを気にしたりせず、消えたらしばらく休んでから再開したほうがいいかもしれない。
終盤はストーブドフレークの常で熟成香が極まり名残惜しさと深い余韻を残して終了。

全体的に特筆すべき強い個性を持っている訳ではない。ただ、とても爽やかさでありながらなかなか味わい深いアロマを持ち合わせており、それは後半になればなるほど深くなる。気が付くとこのtobaccoの魅力に取り憑かれて一日こればかりという日もあった。
誰にもおもねらない。真面目に奇をてらわずに理想的なパイプ葉を作るとこうなりますよというような静かだが強い主張を感じる。
例えばヴァージニアの青臭さや若いミクスチュアのタバコ臭さが苦手で、差し引きなしのプレーンなパイプ葉を求めているなら間違いなくベストチョイスの一つになるだろう。ただし甘みは少なくキックが強く渋いtobaccoだ。

舌荒れの危険性あり。ニコチン強め。ベテラン向き。慣れれば常喫性は高い。
時間帯は空腹を避けて。合う飲み物は紅茶、ウィスキーなどの蒸留酒。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○★○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○○★○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強






2014年10月27日月曜日

Davidoff PRIMEROS(Maduro)



ダヴィドフ・プリメロス・マデューロ
製造国:ドミニカ
サイズ:ペティパナテラ(10.5cm)
種別:ドライシガー

久しぶりのダヴィドフ。といってもドライシガー。いや、ドライシガーと言えどもダヴィドフ。他とは一線を画する。

ここで改めてダヴィドフの魅力について語る必要はないと思うが、一度でもダヴィドフのプレミアムラインを味わった事があれば、シガー文化に感激崇敬できる事は間違いない。ダヴィドフが自社のシガーをワインに見立てているのは決してイメージだけではない。シガリロやドライシガーであってもそれは変わらない。

PRIMEROSもその例にもれず加湿して喫えばその辺のプレミアムシガーも裸足で逃げ出すほどの気品と味わい。
PRIMEROSは直訳すると「一番」とか「初め」という意味。文字通りダヴィドフを初めて体験しダイジェストで味わうことができる逸品だと思う。
PRIMEROSシリーズは全部で4種。ニカラグアが2種、ドミニカが2種。これはドミニカのラッパーがより熟成された方の「Maduro」。

生葉の芳香はそれほど強い方ではないが、発酵したラッパーの熟成香が心地よい。
序盤はとにかくスムース&マイルド。火を灯した瞬間からほのかな土と太陽の香り。気品に満ちた熟成香。蜂蜜の喫味が後を追う。
中盤、喫味もアロマも大きく変化せず、コクとメリハリが増してゆく。終盤になればなるほどクリーミーなアロマが増して火を消すのが惜しくなる。ドライシガー特有の枯葉臭もないことはないが、加湿さえきちんとできれば全く無視できるレベルのものに抑えられる。

Tin缶に銘記されている「MADURO」とは熟成という意味で、乾燥熟成された高級ラッパーだけに冠せられる。

サイズはダヴィドフの公式サイズでは「ペティパナテラ」というサイズ。デミタスとほぼ同じだがやや太め(約14mm)でペティコロナに近い。喫煙時間は約40分。充実した一日の終わりに至福の時間が流れる。コーヒーにも最適。

日本国内では6本入りで6000円前後、DutyFreeで4000円前後。デイリーシガーとしては若干高めだが、ダヴィドフとしては破格の安さだと断言できる。


2014年10月21日火曜日

Samuel Gawith Golden Glow



サミュエル・ガーウィズ ゴールデン・グロウ
使用葉:バージニア
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)

日本の店頭で手に入るサミュエルガーウィスのフレークは9種あって、そのうち着香やブレンドなしのストレートバージニアを味わえるのは、フルバージニア、ベストブラウンフレーク、そしてこのゴールデングロウの3種。

この3種のストレートバージニアの位置関係は簡単に言えばストーブ(葉の加熱乾燥)と圧縮熟成の度合いで分けられる。
ゴールデングロウはその中でもっとも浅煎りで熟成も浅い。ゴールドバージニア(と銘打っている)というほどではないが、かなり素に近いバージニアの味が楽しめる。
青臭さはやや残るものの、バージニアとは本来こういう味わいのものだと教えてくれるような奥の深い味覚を刺激してくれる。

葉様はやや明るいブロークンフレーク。生葉の香りはまるでパンのような甘い芳香。
つまみ上げた葉はややしっとりしているが軽い。サミュエルガーウィスのフレークの中ではむしろ乾燥している部類に入るだろう。それでも開缶してから数日経ってからの方がストレスなく喫える。
少し手でほぐし、部屋の湿度に慣らしてから詰める。時間の目安はできれば30分以上。あまりほぐしきらずにかたまりも残しつつ詰めると火種も小さく済む。

ストレートバージニアに共通する欠点は「バイト」だ。相当気をつけてスロースモークしないと舌にきつい。それは舌荒れというよりも青臭さによる渋みとエグ味の刺激で、口腔内喫煙であるにも関わらず喉まで痛くなることさえある。

それ故神経質にドローしながらゆっくりと、しかも休み休み燻らせる事を余儀なくされる。バイトを最低限に防ぐためには火種を小さくすること。火種を小さくするためには「ラブ(ほぐし)」の度合いをなるべく少なくするのがいい。理想的にはフレークのまま詰めるのが良いが、乾燥と火持ちの兼ね合いもあるのでいろいろ見極めながらコツをつかむ必要がある。ちなみに火付き火持ちを気にするあまり念入りに揉むという方法もあるが、深煎りや長期熟成した葉においては正しいが浅煎りのバージニアではバイトの原因となるので注意が必要。また風味もだいぶ変わる。

序盤、火が安定するやいなや甘い香りと喫味が周囲を包む。青臭さは殆ど感じられずスムーズ&スイート、しっとりとしたパン・ド・ミを頬張ったような幸福感に満たされる。
良いストレートバージニアは、葉の品質、ストーブ、熟成の三拍子が揃って初めて成立するがゴールデングロウはこのバランスがとても良い。

中盤はやや青臭いアロマが出てくるが、同時に喫味に若々しい香ばしさが出てくる。サミュエルガーウィスの特徴で、甘さだけでないフローラルで複雑なアロマと風味だ。スロースモーキングしている限りはあくまでもマイルドだが、過燃焼気味になるとあっという間に牙を剥くので注意。舌にも来るが、どういうわけか喉を刺激する。

クライマックスは終盤。青臭さは消えスピード感が増してくる。バイト感も引っ込んでくる。甘さが引っ込んで葉巻のような感覚が出てくる。もちろん葉巻のそれとは決定的に違うが、土の香り、雨上がりのような空気感が柔らかに漂う。とても香ばしく豊かだ。

ストレートバージニアフレークにはダンヒルフレークという名作があるが、ダンヒルフレークが全く神経を使わずに喫えるのに対し、ゴールデングロウは非常に繊細な部分を持っている。味を引き出すのにはやや苦労するが「カチッ」と何かがハマる瞬間があって、一度そこに突入すると圧倒的な風味が押し寄せてくる。しかも喫う度に表情が全く違う。このテイストの情報量の多さは他のストレートバージニア葉とはちょっと比較にならないのではないだろうか。「甘い」だけがストレートバージニアと思い込んでいるとゴールデングロウの真価は分からないが、気づきさえすればこのtobaccoに飽きてしまうことはそうそうないだろう。

最後はやや渋みが勝って終わる。この渋みもまた、中盤の青臭さとは無縁の熟した喫味で好感が持てる。ウェットになりがちなため最後まで喫うにはややテクニックがいる。

舌荒れの危険性は大、合う飲み物は水。時間帯はデイタイム。なるべく味覚の鋭敏な時間帯がいい。ニコチンは強め、空腹時は避けたい。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○○★○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○★○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○○○★○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強










2014年10月18日土曜日

AVO Domaine Avo Puritos




ドメーヌ・アヴォ・プリトス
フィラー:ドミニカ、スマトラ他
ラッパー:エクアドル
製造国:ドミニカ共和国
サイズ:プリトス(9.8cm)
種別:ドライシガー

僕がシガー好きと知る友人からのアメリカ土産のAVO。国内でも買えるがなんとなく価格帯が微妙でなかなか手が出ないでいた。
ニューオリンズで手に入れたというから限りなく産地直送に近い。ありがたく頂戴した。

ドライシガーの部類に入るが、巻きはハンドロールでプレミアムシガーと変わらない。
シガー大国のアメリカでは政治的理由でハバナが手に入らない。そんなわけでプレミアムシガーの主流はドミニカ産だということだが、かつてのキューバにあったアメリカ資本のシガーメーカーの多くがキューバ革命の際にドミニカに逃れている。そのせいかドミニカンシガーには、どうにかしてハバナを超えてやるというような一種気合のようなものを感じる。

AVOは比較的新しいブランドで1980年代後半の立ち上げ。アメリカのジャズ・ピアニストAvo Uvezian(アヴォ・ウヴェジアン)の名前を冠している。ストーリーとしては彼が立ち上げたブランドという事になっているが、実際にはシガー好きのアヴォが初めてヨーロッパでのツアー中にハバナを喫い、それに感動してドミニカで理想のシガーを求めてシガーメーカーにオファーを出して作らせたというのが始まりらしい。そのレシピが秀逸であったために権利化、事業化しダヴィドフが製造する。

AVO Notturnoというコロナサイズを初めて喫った際、とてもハバナに近い喫味でびっくりした憶えがある。しかしハバナよりもっと洗練されたというか軽やかな喫味が特徴で、引っかかるものが何もない。

このPURITOSも非常にスムーズで爽やかだ。
土の香り、日なたの落ち葉に包まれたようなアロマ、熟成感、エグみ、全てにおいて中庸でマイルド。
ダヴィドフのパナテラからあの高貴だがどっしりとしたアロマや余韻を差し引いた感じで、プレミアムシガーに負けない素晴らしいアロマと喫味を味わうことができる。少し加湿してやると、もはや「ドライシガー」の部類に入れてしまうのが失礼なほどの味わいだ。

巻きがやや粗め、硬めで吸い込みにやや苦労する部分もあるが、ばらつきというよりは意図的な感じもする。短めのシガーをゆっくり味わうにはかえってこのぐらいの方がスロースモーキングできて良いのかもしれない。

国内で買った場合は10本入りで3800円。一本あたり380円だからデイリーシガーとしてはかなりのコストパフォーマンスだと思う。

ちなみにDOMAINEは日本ではしばしば「ドメイン」と発音して紹介されるが間違いで、正確には「ドメーヌ」というフランス語である。
これはダヴィドフ系列の特徴で、シガーのブレンドやその成り立ちを、ワインのぶどう畑やシャトーに見立てて商品名を付けている。「ドメーヌ」は「シャトー」とほぼ同意でシャトーは主にボルドーに使われ、ドメーヌはブルゴーニュ。つまりは「アヴォ酒造」というような意味合い。

喫煙時間:約30分


2014年10月11日土曜日

Danish Black Vanilla Mixture


ダニッシュ・ブラックバニラ(ミクスチャー)
バーレー、バージニア、マダガスカルバニラ
原産国:デンマーク

所用で新幹線に乗る直前にモールを忘れたことに気が付き、駅前のタバコ屋さんに寄る
ついでに掴んでレジに持って行ったのが、ブラックバニラ(パウチ)。

普段僕は着香系特にバニラ物はあまり喫わないのだけれど、旅先だしたまにはいいかと思い久しぶりに試してみることに。


パイプをやらない人からすれば、パイプの煙(ルームノート)と言えばバニラのイメージが強いと思う。
あま〜い匂いがどこからともなく漂ってくると思えば、髭をたくわえたおじいさんがパイプを咥えていた……というような光景を、子供の頃の僕にも覚えがある。

で、それはイメージだけではなく、コンチネンタル系のパイプ葉の多くは、多寡を問わずバニラが加香されていたりする。そうでなければチョコレート。
それは何と言っても生葉の香りに強烈に反映される。
バニラ入りのクリームのような甘い香りが漂い、それがtobaccoであることを忘れてしまうほどだ。
もう一つ得体のしれない香りがする。どことなく薬臭くてルートビアのような感じもする。

葉様はブラウンバージニアとバーレーのミクスチュア。もちろんバニラのケーシングがたっぷりされている。やや乾燥気味だがデンマーク葉の標準。
火付き、火持ち共に全く問題ない。コンチネンタルはこの辺については全く何も考える必要もなく、ただパイプをパウチに突っ込んで詰めて火を付けられる楽ちんさがいい。

tobaccoとしての味はさして特徴のない凡庸なものだ。
甘いという訳でもなく、辛いというわけでもない中庸。甘いという評価もあるが、これはtobaccoの甘さではない。喫っているうちに苦味を感じてくる人工系の甘さだ。さもなくばバニラの苦味。

序盤はバニラのアロマに満たされてかなりのコクを感じるが、中盤ぐらいから早くも飽きが来てしまう。同時にやや酸味のあるアロマが顔を出してくる。この酸味アロマの原因は分からないが、決していいものではなく、なんとなく食べ物が変質したような嫌気を持っている。煙量はとても多い。
ルームノートもすごいことになる。終盤も大きな変化はなく終了。

バニラの着香がかなりパンチのある強力なものだから好きな人にとっては好ましいかもしれない。
ただ個人的には一度喫ったら向こう一ヶ月はもういいやという感じになる。盛大に燃えるために喫煙時間も短めなのがちょっと気になる。嗅覚も麻痺する。
同じ銘柄でフレークもあるので、そのうち試してみたい。

舌荒れの危険あり。ニコチン感は中ぐらい。
合う飲み物はカフェオレ。
時間帯は夜。

1000円/40g(2014)

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○○○★→強
  2. 甘  み 少←○○○○★○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○★○○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○★○○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○○○★→濃
  6. 満喫感  弱←○★○○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○○★○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○★○○○○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○★○○○○→強

2014年10月8日水曜日

天才




天才かどうかを決めるのは神であって
天才は自分が天才かどうかなんて、そんなこと気にしてないのです。
いや、なるとかなれるとか、そんな事ですらない。

天才とは、天が特別に与えた才能です。
天才は神が作るものです。
神によって天命を受け
それを真摯に受け止めて自己の能力を無心に発揮している状態
それを媒介する存在が天才です。

天才は人とではなく、神と話をしています。
人は相手にしていないのです。

自分を天才だと言うような人間は、ちっとも天才ではなく
天才に憧れているただの俗物です。

天才はただ神と会話しながら頭脳と手足を動かしている。

2014年10月6日月曜日

SamuelGawith 2014 Limited Edition




サミュエル・ガーウィズ 2014 Limited Edition
バージニア、ブラックキャベンディッシュ、ヘーゼルナッツケーシング
原産国:イギリス


サミュエルガーウィスの他の銘柄とは違い、まるで海苔の缶のような入れ物に海苔のように入っていた。

葉様は明るいやや粗めのリボンカットのゴールドタイプのバージニア葉が9割、黒いキャベンディッシュが1割ぐらいのミクスチュア。ややしっとり気味で、圧縮されずにとても柔らかくパッケージされている。

生葉の香りは、ほんのりとチョコレートのような甘い香りがするが、缶ラベルの表記上は「ヘーゼルナッツのフレーバー」とある。tobaccoreviews.comを検索してみるとこの他に「アマレット」「蜂蜜」とある。確かにバージニアからほんのり蜂蜜の甘い香りがする。アマレットはどうだろう。ヘーゼルナッツ+蜂蜜とアマレットの香りはけっこう似ているから僕には判別できなかった。
こんなふうに書くと、コンチネンタルの着香タバコか?と誤解されそうだが、香り自体は柔らかくほのかでイングリッシュミクスチュアの矜持は保っている。

火付きは良好だが、火持ちは開封直後だとミクスチュアとしてはややモイスト過ぎるかもしれない。しばらく室内湿度で馴染ませるが、それでも時々立ち消えする。
おかしいなと思い葉を手にとって調べると、バージニアの方がまるで保湿されたようにしっとりしている。ベタつきはない。ブラックキャベンディッシュの方は乾いて締まっている。一晩かけてゆっくり脱湿させると火持ちも改善された。

カットが大きめなので緩めに詰めて燃焼に合わせてタンピングで詰めながらゆっくりと燻らせると良い。アロマを楽しむには吹かし気味がいいが、スロースモーキングに徹すれば煙量はそう多くはない。

序盤、とてもスムーズで柔らかい。アロマ、喫味ともマイルドスイート。ほんのりナッティなアロマ、バージニアの自然な甘さと程よい青臭さ。ニコチン感はやや強い。

中盤、スロースモーキングを心がけていると時折隠れていたチョコレートのような甘み。やや吹かすと木の実、干し草のようなアロマが頭をもたげてくる。。日本のピースのような味わいもある。クライマックスは長い。

終盤は次第に舌を刺す若さが出てくる。やがて黒土の香り。燃焼がやや速めになりフィニッシュ。

これはゴールドバージニアを味わうtobaccoだ。
普段なかなかこんなにふんだんにゴールドバージニアを使ったミクスチュアにはお目にかかれない。

傾向としては同社のグラウスムーア(GrouseMoor)に近い。
ゴールデングロウ(GoldenGlow)もゴールドバージニアだがこちらはフレーク。
もちろんフレーバーは三者全く異なるが、ゴールドバージニアを主体にし極力着香を抑えつつキャベンディッシュで引き立たたせるコンセプトは似ている。
こういった高品質のバージニアを味わえるという事自体が贅沢だ。

ゴールドバージニアはサミュエルガーウィスの特徴の一つで、コーヒーのローストで言うところの「浅煎り」。
ところが浅煎りの葉は品質が良くないと欠点ばかりが目立つ。
だからたいていの場合、あまり良いとは言えない品質をごまかすために着香着味がされているのが殆どだし、そうでない場合でも、どこまでも続く単調な甘み、強いニコチン感、終盤の速さ、そして青臭いルームノートと舌荒れに飽き飽きしてくることが多い。体調にもよるけれど。

しかし2014LimitedEditionのバージニアの品質は同社がかなりの自信を持っていると分かる。単調さは抑えられ、自然な甘みとアロマを感じることができる。そのためのブラックキャベンディッシュの配合とケーシングなんだなと分かる。それは実に節度あるもので、やはりイングリッシュミクスチュアは良いなと改めて思わせてくれる。ゆっくり燃えてくれる点も美点のひとつ。

3500円/100gというサミュエルガーウィスの中では少しお得感のあるtobaccoだ。
舌荒れの危険は大、努めてゆっくり燻らせる必要あり。
ニコチン酔いの危険性も少ないとは言えない。
喫味的には朝からいけるのだが、空腹時は避けたい。
葉の性格としての常喫性は高いが限定品のため入手次第になる。
合う飲み物は紅茶、水、ワイン、ビール。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○○★○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○★○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○○★○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○○○★○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○★○○○→良
  9. 常  喫 無←○○○○★○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強

3500円/100g(2014)

2014年10月2日木曜日

SAM'S FLAKE


サミュエル・ガーウィス・サムズフレーク
バージニア、オリエント、トンカビーンズケーシング
原産国:イギリス

同社の「1792」とよく似た葉様、芳香を持つフレーク。 開封すると真っ先にトンカビーンズの甘くてスパイシーな香りを感じる。 ややモイストな比較的整ったフレークを手に取ると密度のあるどっしりとした重みを感じる。量ってみると1枚当たり5gを少し超えていた。

熟成されたフレークはライ麦パンの香りがするが、これはシュトーレンのそれととても良く似た甘い香りで、酸味を感じさせるものはない。
四つ折りにして(19mmパイプの場合は半分に切ってちょうど)ボウルにねじり込んで火をつけるが安定までやや苦労する。開封直後なら乾燥は1〜2時間は必要。火持ちを良くしたいなら一晩は放置した方がいい。

安定すれば火持ちは良いが、サミュエルガーウィスのフレークに共通することとして、乾燥時間の配慮や、火付きから安定までにややテクニックが要る印象がある。
他ブランドのフレークでは何の苦労もしないのにサミュエルガーウィスでは悪戦苦闘する事も少なくない。

火付き火持ちは開封して乾燥すればするほど良くなる。しかし味の方はモイストのままの方が良いので悩ましい。
消えてほしくはないけどゆっくり燃えて欲しい。そのためにはなるべく開封直後のモイストをキープしておきたい。となると火の管理は結構忙しく、他の何かをしながらの「ながら喫い」は難しい。
このサムズフレークも同様で、乾燥させれば火の管理に全く苦労はしないのだが、なるべくならモイストのまま頑張りたい葉のひとつだ。

(追記:ほぐして少し揉んで「レディラブド」の状態で詰めたところ、火付き、火持ちも申し分なく、また風味も失われずに喫うことができた。)

火が安定して序盤、優しく暖かい甘みで満たされる。パンチや刺さる要素などはひとつもなく、ひたすらスムース&マイルドだ。
トンカビーンズのアロマもしっかりと感じ取れる。
熟成香ではなくオリエント的なアロマも強い。カタログを見ると「各種バージニアブレンド」とあるが、むしろオリエント葉主体のtobaccoではないだろうか。

中盤から喫味にややキックが出てくるが、主体は優しい甘みと香ばしさ。煙量はとにかく少なく消えかかる寸前が美味い。

ポカポカした陽の注ぐ草原にピクニックに出かけたような感覚。そこでバゲットと若い白かびのチーズを広げ、物静かな恋人とランチをしているような感じだ。リラックスとおおらかさと安心。


ストーブされたバージニアは終盤になるにつれてより一層香ばしさを増し、トンカビーンズのアロマが沈んでいくのと引き換えにどんどん顔を出す。
サミュエルガーウィスらしい土の香りと深みのある喫味に包まれてくる。
優しい夕陽を浴びて終了。

サミュエルガーウィスらしさと親しみやすさのバランスのとれたフレークだと思う。特別なギミックがあるわけでなく、わかりやすいサインやクライマックスがあるわけでなく、華やかさもない。淡々としかし濃厚な時間が過ぎてゆく。それは退屈な時間ではなく深い沈思とリラックス。自分を取り戻す大切な時間。
イギリスタバコの様式美。

ひと通りフレークに慣れた人におすすめしたいtobaccoだ。
舌荒れの心配は中程度。ニコチン酔いの空腹時以外は心配はない。
合う飲み物は水、コーヒー、ワイン、ブランデーなど。
時間帯は昼〜夜。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○★○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○★○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強

1900円/50g(2014)





2014年9月30日火曜日

Bell's ThreeNuns



ベルズ・スリーナンズ
バージニア、ペリク(ケンタッキー)
無着香
原産国:デンマーク(オリジナルはイギリス)スカンジナビアンタバコOEM

ペリクパイプ葉のメジャー代表格のひとつがスリーナンズだ。

これまで何度か「ペリク」の味わいについて書いてきたけれど残念ながら現在、パイプ葉においては本物のペリクにはまずお目にかかれないと言ってもいいと思う。スリーナンズも本家本元のペリクは使用されていない。

ペリクの定義は、厳密には「産地」「品種」「加工法」の3つが狭義で限定された加工葉のことを指す。
産地はルイジアナ州のごく限られた地域、品種はそこでしか栽培できない種類のバーレー種、そして加工法は圧縮された長期嫌気熟成されたたばこの漬物である。この3つの条件を整えない限り、どんなに製法を正確にトレースしても同じ味は再現できないという。
ハバナシガーがハバナ以外の場所で同じ種と栽培法を守っても、どうしてもハバナに及ばないのと同じように、ペリクもまたルイジアナでなければペリクではない。

現在本家本元のペリクはアメリカン・スピリットで独占使用されており、それ以外のTobaccoでペリクと称しているものは、全てケンタッキー州で同じ製法で作られるものを指す。
そしてケンタッキーペリクは本来のペリクとは全く違うと言われる。

となればスリーナンズもまた「ペリク」であるとはなかなか宣言はできない。内外の古参スモーカーのレビュー表現を借りれば、かつてのスリーナンズとは似て非なるものであるとのことだが、僕は残念ながらイギリスで作られていた頃のオリジナルの味は知らないので、現代のデンマーク製スリーナンズでレビューを書くしかないのだが、その範囲で味わいの結論から先に言えば、スリーナンズは紛うことなきペリクのそれを持っているとは言える。

ペリクがアメスピでのみ使用されているとすれば、ペリクの喫味のベンチマークはアメスピ「ペリック」を頼るしかないのだが、そのアメスピ「ペリック」の味わいに近い。

狭義3つの条件を揃えたペリクの100%葉は、酸味、甘み、そして強烈な熟成香を伴うが、クセが強いので単体で使われることはまずあり得ない。アメスピ「ペリック」もまたバージニア主体で、オリジナルのアメスピに少量の「本家ペリク」がブレンドされているのだが、その量は全体の葉色から言ってもおそらくごく少量である。
しかし「アメスピペリック」の味わいは、喫味、アロマ、喫後感のどれをとっても他のtobaccoとは一線を画す深みを持つ。

ペリクは主にバージニアにブレンドされることで真価を発揮するが、その変化は生葉の時ではなく火を付けた瞬間から始まる。
バージニア特有の甘みに奥行きと爽やかさを、アロマに独特の熟成香を、そして喫後感はジンジャーエールやルートビアのような清々とした満足感が加わる。

しかしバージニア単体との違いは実に微妙で、他のブレンドtobaccoのようなわかりやすい熟成香とか喫味のクセとかにはないものだ。ペリクの真価はやはりペリク入りのバージニアを味わうことでしか得られないところがある。

スリーナンズもまた生葉の状態ではそれほど強い個性があるわけではない。
それはバージニアtobaccoであると言っても済んでしまうほどのもので、よく言われるような「酸味」とか「強烈な発酵臭」というような単体ペリクを表現する特徴とはかけ離れており、穏やかだ。

葉様は小さめのコインカット。未熟成のバージニアとケンタッキーペリクが5:1程度の割合で巻かれており、それが輪切りになっている。やや乾燥気味だが湿度は保たれている。
標準的なボウルの場合、このコインを5〜6枚、軽くほぐして詰める。

ほぐし方は軽く形が崩れる程度、詰め方はやや緩めに、火を付けてからタンピングして少し圧縮してやると良い。
火付き、火持ちとも申し分なく、着火と同時に若いバージニアの青臭いアロマが周囲に広がる。

もしもバージニアだけならこの青臭さとぺったりとした甘みが全般を通じて続くだけなのだが、スリーナンズは火が安定した頃からペリク特有の爽やかな甘みと酸味が加わる。
アロマは中盤付近から終盤にかけて熟成された刺激が加わり、程よい陶酔感に包まれ始める。それはまるで若いハバナシガーをやっているような感覚だ。

そろそろ終わりかなと思う頃、高原の空気を胸いっぱいに吸い込んだ時のような清涼感と名残惜しさがやってきて「おかわり」が欲しくなる。

前回のコーネル&ディール・アダジオとの違いは、アダジオが熟成香でいっぱいになるのに比べ、スリーナンズはあくまでも爽やかなキレのある甘みで終わるという点だ。穿った言い方をすれば、やや奥行きに欠ける。
かつてシガレット喫いだった頃に「美味いなあ」としみじみ感じながら喫っていた時のことを思い出すが、パイプ葉としては旨味には若干欠けるかもしれない。
この不足感はペリクの割合が少なすぎるか、ケンタッキーペリクそのものの個性が弱いというところにあるのかもしれない。ただしその分飽きもなく、常喫性も高く普段使いのタバコとしては申し分ない美点を持っていると思う。

舌荒れの心配はない。時間帯は朝〜昼。合う飲み物は水、ビール、紅茶など。

  1. 生葉芳香 弱←○○○★○○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○○★○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○★○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○★○○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○★○○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○★○○○○○○→強

2000円/50g(2014)


2014年9月23日火曜日

Flandria Black


フランドリア・ブラック
原産国:ベルギー

パッケージには「Dark air cured and fired」とある。つまり「空気乾燥した後、ストーブ(低温で煎った)葉」という意味で、いわゆる「黒タバコ」の部類に入る。「葉巻に喫味が似ている」と称されるが早い話ジタンやゴロワーズと同類のもので、葉巻とは製法も原料葉も異なる。実際には乾燥して煎るだけでなく積層発酵もさせている。故に生葉の香りは熟成香となる。
葉様はシャグで非常に細かい。
生葉の香りは一言で言えば「馬草または腐葉土のにおい」だ。しかしゴロワーズ等と比べるとその独特の香りはずいぶんと控えめ。

シャグカット葉をRYOで喫う場合、ローリングマシンで巻くとどうしても細くなりがちになる。加えて刻みが細かいため、葉詰めをキツめに巻くことになる。そうなるとどうしても味の線が細く鋭くなり、喫味がいまいちハッキリとしなくなってしまう。フランドリアブラックの場合はそれが顕著で、細身に巻いて生葉の芳香を頼りに喫っても味もアロマもぼやけてしまって美味しくない。基本的に手巻きにして太めに巻くのが良い。

実はこのフランドリアブラックは数カ月前に買い求めていたのだが、往年のジタンの風味を期待したせいか、やや物足りない部分もあって、開封後すぐに放置していた。
今回の印象を書くに当たり加湿保存していた残りの葉をしばらくぶりに取り出し、RYOとミニパイプの両方で喫ってみた。

生葉のあのむせ返るような香りはやや飛んでしまっていたが、燻らした時のアロマは熟成感が増していた。
もちろんRYOでも旨いのだが、ミニパイプに詰めて(燃え方が速いので詰め方や喫い方に注意が要る)みると、ココアのような風味に出会うことができる。

黒タバコの特徴は、ニコチンが少なめで甘みはなくアロマが豊かだというところ。味というよりはアロマを味わうために燻らすところがあって、誰かが喫っていると周囲はすぐに「あ、黒タバコだ」と分かる。
喫味は基本的に終始渋いがクール&スロースモーキングを心がけて上手に喫うと、コーヒーやココアの様な喫味が出てくることがある。ゆえに本来的に黒タバコは燃焼剤の入らないRYOやパイプに向いている。

特にフランドリアブラックは、往年のジタンのような独特の渋みとエグみのある「いかにも通好み」なタイプではなく、風味は似ているが優しくマイルドでその辺が引き出しやすい。ニコチン酔いの心配もなく気軽に楽しめる。個人的には、シャグカットではなくせめてファインカットぐらいの方が風味が豊かな気もするが、これでも加湿を十分にし太めに巻いてクール&スロースモーキングに徹すると思いもよらなかった複雑な味わいに出会えることは間違いない。初めて黒タバコを喫ってみたいという人にとっては最適だと思う。

価格が安めだが30gと他のシャグに較べて少ない。50g換算すると1100円でコスト的にはやや高めのシャグの部類に入る。
バージニア系に慣れた人には常喫性には劣るが、混じり気のない黒タバコを味わうために常備しておいて損はない。


660円/30g(2014)
  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○★○○○○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○★○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○★○○○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○○★→良
  9. 常  喫 無←○○○○★○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強

2014年9月16日火曜日

Cornell & Diehl ADAGIO



コーネル&ディール・アダジオ
バーレー種、ラタキア、バージニア、ペリク、トルコ、
無着香
原産国:アメリカ(ノースカロライナ)

行きつけのタバコ屋さんで「ペリクを強めに感じられるの、何かないですか」と尋ねたら、棚の奥からこれを出してきてくれた。「ただしバランスはあまり良くないですよ」。

見ると「Morganton NC」の表記。アメリカ製と知って一旦はスルーしかけた。なぜなら過去、アメリカ製のパイプ葉と言えば工業製品でありチューインガム風の着香物か添加物だらけのイメージしかなかったからだ。しかし僕のそのイメージは1980年代のもの。

コーネル&ディールは創業はなんと1990年。それまでのアメリカタバコの常識を破るピュアでこだわりを持ったtobaccoを提供してくれる新しいブランドだそうだ。20世紀末以来、アメリカではこうした小規模のファクトリーが次々と生まれている。コーネル&ディールはその元祖的存在。

ノースカロライナ州はアメリカ東部(いわゆる南部に属する)、古くからタバコの生産地として北隣りのバージニア州と共に歩んできた。その内陸部の町のモーガントンという町のファクトリー、コーネル&ディールのライナップはtobaccoreviews.comによれば100種類を超えている。日本で正規販売されるのは10種類。



パッケージはブッシュ&プルのアルミ缶。開けるとラタキアの強い芳香が印象的。
葉様はミクスチュア。やや乾燥気味で、摘むとほろほろとほぐれる。ラタキアの芳香に交じって微かな発酵香。
パッケージには
「Cubed Burley, Latakia, VA flake, Perique and Turkish」とある。
一見、キューブドカットの葉は含まれているようには見えないが、レディラブドな小さなコインカット状の葉がそれだろう。

火を付ける前、付けた瞬間、全てにおいてラタキアの強いアロマと渋み。

火付きはまあまあ。甘さは全くない。煙量は多め。ガツンとキック。直感的にこれは努めてゆっくりと燻らすべきと感じ、ドロウ(吸い)よりブロウ(吹き)に丁寧に意識を集中する。…と奥の方からじんわりとバージニアの甘みが昇ってくるが、肝心のペリクは相変わらず感じ取れない。これは正真正銘ラタキアタバコだ。

「ん?もしかしておじさん、ラタキアとペリクを聞き間違えた?」
カタログを見るとラタキア50%とある。だが確かにペリクもブレンドされているようではある。甘臭い発酵臭にそれを一応は感じることはできる。

アメリカタバコと言えばバーレー種だが、バーレーは素のままでは甘みはなくたいていの場合はケーシング(着香、着味)されているが、これは全くその気配はない。
実際、序盤の喫味はとにかくビター。渋くて苦くて辛い。舌荒れとは違う、しびれるようなパンチ&キックの連続。アロマはラタキアとバーレーのややナッツな感じのハーモニーで好感が持てるが、自分の味蕾がどうにかなってしまいそうな不安感にすらかられるほどストロングだ。

火が安定してくると、それが少しずつ変化してくる。とにかくスローバーニングに徹して煙量を少なく心がけていると、やがて日なたの干し草のようなややこっくりしたアロマが周囲を満たし始める。と同時に喫味の方にもコクのある柔らかい酸味が交じる。

主役は相変わらず固めのラタキアとバーレーが幅を利かせているが、確かに奥底でペリクが下支えして、ビターに厚みとコクを与えていることに気づく。
さらにほのかに甘い喫味が表に出てくる。
「うん、ペリクだ。」
ペリクは単体でペリクなのではなく、ブレンド母体のtobaccoを下支えして深くコクのある味わいに変えてることでその存在を知ることができる。

終盤にかかると、本格的にペリクとバージニア(影響を受けたバーレーかもしれない)が主旋律を奏で始め、ラタキアが沈み込む。日なたの松林で、採ってきたきのこや山ぶどうを広げているような遠い記憶が蘇る。チョコレートのようなフレーバーも出てくる。

「なんだこれは!」

形容のし難い不思議なtobaccoだ。序盤と中〜終盤で全く印象が違う。

ブレンドの、無着香のバーレーとラタキアが主体、ペリクにトルコタバコ、申し訳程度にバージニアという構成は、字面だけ並べればまるでハードボイルドである。そもそもラタキアとペリクを一緒にするという発想が僕には初体験であり、ちょっとしたカルチャーショックだった。コーネルディールのラインナップを見ると、ラタキアとペリクのブレンドが思いの外多い事にも気がついた。

しかしこれも有り。
ブレンドが最初から最後まで渾然一体となるのではなく、時系列で主役が代わる。
初めは強烈なラタキア。そこにバーレーの青臭さが絡む。
その強烈さをペリクがさらにクセのある印象に仕立てる。
やがてバージニアとペリクのハーモニー。
最終的に、それら全てがバーレーとトルコタバコに染みこんでストーブされて大団円。

クライマックスは明らかに終盤だ。
深いアロマが感覚を満たし、熟成の進みきったウォッシュタイプのチーズと若くて渋いフルボディのカベルネソーヴィニヨンを合わせたようなアンバランスな渋みと熟成の喫後感で終わる。

一度で何度も美味しい、お得なtobacco。
「ペリクを存分に感じる」という意味ではちょっとベクトルは違うかもしれないが
複雑でビターでキックの中にあるtobaccoの本来の醍醐味、快楽が潜むという意味では
ペリクの存在感は十分だ。
美味いと感じるかそうでないかは人による。紙一重。
僕は「旨い!」と素直に感じた。
ただしパイプ初心者には決して薦められない、ベテラン向けの変態ミクスチュア。

僕自身はまだ到底その域には達してはいないが、散々世界中のタバコを燻らしてきた挙句、一周してしまったようなベテランスモーカーにとっては新鮮な一服を提供してくれるに違いない。

難しいが、その魅力を引き出す価値は十分ある。
アメリカ人がこんなひねくれたtobaccoを作れるとは、感服。

Cornell & Diehl の他のラインナップもぜひ味わいたいと感じたが、国内販売価格が高すぎるのが難点。国内2600円。本国では13ドル前後、ネットを覗くと通販の実売で9ドルを切る場合もある。課税・シッピング・利益加算されたとしても正規ならせいぜい2000円前後に抑えられないだろうか…というのが正直な印象。



時間帯は夕食後〜深夜。個人的には朝、寝ぼけた味覚と嗅覚に喝を入れるのにも重宝している。
火付き、火持ち、舌荒れは標準的。ニコチン酔いの心配はあまりない。
合う飲み物は、ウィスキー、スピリッツ系など。意外にコーヒーも合う。


  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←★○○○○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○○○★→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○★○○○○○→良
  9. 常喫可能 無←○○★○○○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○○★○→強

2600円/56.7g=2oz (2014)