2017年1月18日水曜日

「慈母」のリトグラフ(ジークレー)ができました

慈母シリーズの第一作目「慈母」がリトグラフ(ジークレー)になりました。

ジークレーというのは、リトグラフ技法に代わると言われているデジタル複製技法です。

非常に精密で原画と変わらない発色、耐光性、耐久性(200年以上)を持っており、普通のデジタルプリントとは一線を画しています。

紙質はもちろんインクも版画専用のものを使っており、原画と見比べても全く見劣りしないため、観賞用、インテリアとしてだけでなく、コレクションとしても認められています。広義としてのリトグラフは、現在ほとんどこのジークレーを指すものといってもいいでしょう。



僕は以前は原画主義で、印刷やプリント、版画にはかなり懐疑的でした。

その理由は見た目の再現性もさることながら、「エネルギーが複製されていない」ことにありました。

比較的リトグラフ化には向いていると言われる日本画の作品でも、原画に比べるとリトグラフは若干ですが見劣りがするものでした。

また当然エネルギーの総量というものは原画に比べるべくもありません。

一方、大手プリンターメーカーによる名画の複製技術の進歩はめざましく、そこにはとても興味をそそられてきました。

それでいろいろ模索をしていました。

初めは原画の凹凸までを含めた「正しい複製」を目指してきましたが、このジークレーによるリトグラフに出会って、これまでのリトグラフの常識や概念、複製に対する偏見が吹き飛びました。

僕がこだわるのは、「正確な発色」これ一点に尽きます。

原画の色は、環境の光によって発色します。

発色というのは光を反射して自ら色味を変えてある意味発光するという現象も含みます。油彩は特にそうです。

普通のプリントや印刷、版画ならば、陰影は再現できますが、発色〜発光までは再現できません。
色味に関しては「それっぽい色」しか出せません。

晩年のマチスのような単純な色の切り絵ならば従来技術のリトグラフで十分再現できそうですが、これが例えばマチエールが複雑に絡んだゴッホやミレー、グレース技法の嵐であるルネサンス美術や初期のダリのような作品になるとお手上げです。

僕の作品もマチエールやグレースがかなり多用されているので、複製は不可能と感じていました。

しかしジークレーによる版画は、それらの限界を越えています。

透明感や凹凸までは再現できませんが、色味の持つエネルギーや発色までも再現できています。

まるで原画を見ているようだ(作者談)。

グレースの持っている透明感まで再現できればもっと素晴らしいのですが、ともかく発色とエネルギーの総量だけは、原画にかなり近づいたと言えると思います。

もちろん、それは原画あってのものであることには変わりありません。

音楽で言えば、原画がコンサートにおけるライブ、これまでの版画や印刷、プリントがレコードやCDならば、ジークレーはハイレゾ録音と言ったところです。

そんなわけで、現代のリトグラフであるジークレーとなら、お友達になれるかなと、僕もちょっとそこに足を踏み入れてみることにしたのです。

今回、「慈母」のジークレーリトグラフを5点ほど、ほぼ原価で頒布することになりましたので、ぜひお部屋に飾ってください。
きっと素晴らしいエネルギーを感じることができることでしょう。>>「慈母」リトグラフの購入ページ




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