2014年12月23日火曜日

LAPHROAIG 15年

今から5年ほど前、煙と無縁の生活も長くなり、酒ももっぱらワインばかりになっていたある日、突然ウイスキーにぐいっと力づくで引き戻されるきっかけになったのがこのラフロイグ15年。昔のカティ・サークと並んで、いくつかある僕のウイスキーの定点の一つです。
2009年頃の現地購入で、15年というのは現在のラインナップにはないものです。

非常に個性の強いウイスキーで、好き嫌いがはっきり分かれるウイスキーです。
素性は非常にピーティ。世界のウイスキーの中でももっともピーティな部類に入ると言われています。
第一印象は、一言で言えば「歯医者の味と香り」。
クレオソート、正露丸にも例えられますがまさしくそんな感じです。
そしてピリッとしたバイトと塩味。

ところが2口目、3口目と進んでいくうちに新鮮な海の香りと塩気が押し寄せ、郷愁を誘う味わい。爽やかなソーダのような甘みも昇ってきます。
加水でピートアロマが増し、やがてフルーティさとバニラ香が増していきます。
後味はとてもキレの良いもので、爽やかさが残ります。

ところでこのラフロイグ、パイプととても相性がいいのです。特にラタキア入りのイングリッシュミクスチュア。
西洋のお酒のマリアージュは日本のそれとは違って割りと「似たもの同士」を合わせる事が多いようですが、それは掛け算のような効果を生み出すようです。
ラフロイグは強いピート香が持ち味。ラタキアもまた強い薫香が持ち味。その両方が出会うと、突如まろやかでフルーティな味と香りが強調されてきます。まるでマスカットのようです。それはシェリーカスク(シェリー樽を使ったウイスキーはシェリー酒由来の華やかなフルーツの味と香りが漂います)のような華やかなものではなく、熟成と化合によって生まれた抑制の効いた涼やかな素性のものです。

10年との味わいの違いはそれほど大きくはありませんが、15年の方がスモーキーさがまろやかで香りの強さに較べて飲みやすさは増しています。
ノンチル(冷却濾過なし)と言われる18年はまだ味わってません。そろそろ15年が空になるので遠くないうちに飲み比べしてみたいと思っています。

飲みやすいのは水割りです。できれば氷なしで。慣れたらストレートから徐々に加水も香りの変化を楽しめます。ただし香りが開くタイプではありません。



種別:シングルモルト
原産国:スコットランド(アイラ)
容量:700ml
度数:43%
熟成:15年
樽:バーボン


2014年12月19日金曜日

Bill Bailey's BALKAN Blend




ビル・ベイリーズ・バルカン・ブレンド
使用葉:ヴァージニア、ラタキア、オリエント(トルコ葉)、ペリク、ケンタッキー
着香なし
原産国:ドイツ
価格:1800円/50g(2014)


「バルカン」の3つ目はその名も「バルカンブレンド」。
ドイツのDAN tobaccoの製品。元々はイングリッシュミクスチュアレシピ。

開缶すると、ラタキアの薫香と白檀のお香が広がる。他にレーズンのような香りと古い屋敷の応接間のような木の香り。
葉様はやや乾燥気味のミクスチュア。リボンカットはとても長い。
ペリクがブレンドされている。カタログにはルイジアナ・ペリクと書いてある。だとすれば正真正銘のペリク。ケンタッキーも併記しているのでおそらく双方をブレンドしてペリクライクな風味を稼いでいるのかも。
一見してラタキアの印象がとても強い。一応アナウンスでは40%らしいが50%は超えている感じ。

火付き、火持ちともに良好。ちょっと乾燥していたので、一晩軽く加湿してから火をつける。

序盤、ラタキアが喫いたいと思う期待にドンピシャで答えてくれる濃厚でストイックなアロマと喫味が広がる。スロースモーキングを心がければヴァージニアの甘みがほのかに広がる。カタログでは「上質なヴァージニア」とある。サミュエルガーウィスのヴァージニアに比べると奥行きも広がりも乏しい印象。

中盤、ヴァージニアの甘みが引っ込んでさらにストイックに。オリエントのふんわりねっとりとしたアロマが頭をもたげてくる。ところどころコーネル&ディールのアダジオに似てくる。考えてみればブレンドの内容が近い。


終盤はあまり好ましくない。タバコっぽさが増し、かなり気を使っても辛味とエグみが増す。ヴァージニアへのペリク肝心の喫味への影響があまり感じられず、割合的にかなり少ないなあと分かる。ラタキアにしてもアダジオで感じたような明確な主旋律が聞こえてこないままフィニッシュを迎える。

見た目ストイックで荒々しい印象だが見た目ほど強くはない。クライマックスをどこに求めたら良いかちょっと分かりにくいというか、焦点が定まらない感じがする。
ヴァージニアとオリエントがもっと来て欲しいと思うところでなかなか来ない。それがどこか無味乾燥で大雑把な印象を与える。掘り下げようと工夫するのだが底付きが早く、その底はとても乾いていて堅い。

これはヴァージニアの品質あるいはストーブの問題ではないだろうか。どこか適当なところで妥協してしまっている。
価格に比してのブレンド内容は悪くない。イングリッシュミクスチュアを忠実に表現しようとはしている。が、結局のところ「最初の方だけ」というコンチネンタルミクスチュアに共通する限界が見え隠れする。

決して不味いtobaccoではない。ラタキアの喫味は存分に楽しめる。出だしはとても良い。ヴァージニアの甘みやアロマの変化など求めずオリエントを2割増しで加えてみたらきっとぐっと深みを増すのではないか。バランス的に惜しい、そんな風に思わせる葉だった。

舌荒れの可能性は中程度。時間帯は夕食後〜深夜。合う飲み物はウイスキー。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○★○○○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○○★→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○★○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○★○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○★○○→強







2014年12月18日木曜日

ウイスキーのこと

 自分語りになってしまいますが、僕はパイプと同じぐらい、ワインとウイスキーが好きです。
でもワインはパイプとはあんまり相性は良くないのです。

料理と同じで、やはりワインも美味しくいただくには煙関係は少し断つ必要があります。それで15年間の禁煙期間、もっぱらワインを楽しんできました。

その点、ウイスキーはとてもパイプ(やシガー)と相性が良く、パイプを復活してからウイスキーを飲む機会も自然と多くなりました。

折しもNHKの朝の連続ドラマ「マッサン」の放送や、サントリー山崎シェリーカスク12年(2013)が英雑誌主宰の大会(ワールドウイスキーバイブル2015)で世界一になった影響で、ウイスキーがとても人気だそうです。

「マッサン」はニッカの創立者にして日本のウイスキーの父、竹鶴政孝と竹鶴リタ夫人をモデルにした話です。
学生の頃、J.W.ニコルの文章やお酒の辞典を通じて竹鶴政孝の名前やニッカのウイスキーづくりの哲学に触れて以来のニッカファンで、マッサンも楽しく見ています。

ところで僕が初めてウイスキーに触れた頃はサントリーオールドとスーパーニッカ全盛の頃で、本格的なシングルモルトの山崎が出始めの頃。しかし当時のオールドやスーパーニッカは高級酒、山崎に至ってはもはや無縁の世界、学生にとってはサントリーホワイトやキリンNEWSなんていうのがもっぱらでした。

もっともそれらの安価なウイスキー()は水割りにして辛うじて飲めるようなものでお世辞にも美味いとは言い難いものでした。これでウイスキー嫌いになってしまう友人もけっこういました。


僕が初めてウイスキーをはっきりと美味いと認識したのは「カティ・サーク」というブレンデッド・スコッチでした。

このウイスキーはとてもスムーズで品の良いお酒で、初めて口にした時はなんと美味い酒なんだと感動したものです。
マイナス10度を下回る冬の厳しい盛岡での生活、寝る前にはこれをストレートであおってから眠りに就いたのを今でも覚えています。
現在のカティサークはやや味が落ちたと言われていますが、それでもウイスキーが初めての人におすすめしたい、素晴らしいウイスキーだと思います。

カティ・サークでウイスキーの味を覚えた僕は、その後学生の身分でも買える手頃な値段のウイスキーを探し続け(当時は輸入酒と国産酒の価格差が倍以上あったため)、「ハイニッカ」「ブラックニッカ」そして「ピュアモルト」と立て続けにニッカのウイスキーにハマってゆきました。


Japanese Whiskyはその頃に比べたら本当に美味くなりました。これは日本酒にも焼酎にも、そしてもちろん本場のスコッチにも言えることなのですが、銘柄は同じでも30年前とはまるで別物のウイスキーも少なくありません。

中でもニッカやサントリーのピュアモルト群は、本場のスコッチモルトにひけをとらないほどの深い味わいと個性を持つようになりました。


ワインもウイスキーも好きですが、詳しい訳でもなく細かいテイスティングやソムリエを気取ったようなことには興味はありません。
ただパイプ葉の事についてあれやこれや書くようになって以来、お酒についてもせっかく飲んで美味しかった記憶をただ消えるに任せるのが惜しく、文章にして残しておきたくなりました。

そんな訳でパイプtobaccoのレビューに紛らせながら、飲んだお酒についてもウイスキーを中心に少しずつ書いてみようと思います。

さほど珍しい(高い)お酒には巡りあう事もないかもしれません。
それほど気の利いたレビューが書けるとも思いません。
まあそれはそれとして思い出と出会いを大切に一期一会を書きたいと考えています。







2014年12月16日火曜日

Samuel Gawith Commonwealth



サミュエル・ガーウィズ・コモンウェルス
使用葉:ヴァージニア、ラタキア
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)
ド直球勝負のラタキアブレンド

ヴァージニアとラタキアが50/50のミクスチュア。
ダンヒル965と良く似たキャラクターを持つが、965の方はオリエント葉が配合されその分ラタキアが若干少なめになっているのに対して、コモンウェルスはオリエントは使われていない。

開缶するとラタキアの薫香がもわっと立ち上る。
リボンカットは太め、長めでとてもしなやか。上質なミクスチュアだとひと目で分かる。
火付き、火持ち共に申し分ない。

序盤、ラタキアの旨味と薫香が立ち上りながらマイルド&スムース。
中盤、ヴァージニア特有の甘みがぐんぐん増してくる。思ったよりはラタキアは主張しない。
終盤、喫味、アロマとも殆ど変化なく終了。甘みの余韻。

ダンヒル965に良く似たキャラクターだ。
単純に比較すれば、喫味の奥深さと甘やかな風味はコモンウェルスに、喫味のシャープさとアロマの豊かさはダンヒル965に軍配があがる。

特に終盤、葉がストーブされてからの差はかなりあって、喫味の方はコモンウェルスに使われているヴァージニアの質の良さがとても良くあらわれる。本当に素晴らしいヴァージニアだと思う。サミュエルガーウィスのヴァージニア特有の、淀みのない滋味ある甘みは気持ちをゆったりとさせてくれる。
ダンヒル965はそれ比べると、若干ヴァージニアの質が落ち雑味も多く、特に終盤の喫味を上手に引き出すのがとても難しく、うっかりすると惰性に陥りがちになる。

その分アロマの方は965はヴァージニアの弱さをオリエント(ターキッシュ)が補って余りあり、複雑さと新鮮さ、中庸を両立させた形容のし難いアロマを提供してくれる。これが僕が965をやめられない理由の一つになっている。コモンウェルスの方はアロマに特段の変化が起きず、終了のサインが全く分からないことさえある。逆に言えば素直な性格。

「バルカンブレンド」と称する人もいるし、カタログでは「バルカンソブラニー」と対比させている。ソブラニーはともかくこれをバルカンとするならダンヒル965もバルカンと呼んでいいだろう。そして965の方がよりエキゾチックである。
故にコモンウェルスがバルカンかどうかはどうでもいい。むしろ純粋かつ上質この上ない典型的なイングリッシュミクスチュアだ。そしてそれでいいと思う。ラタキアがヴァージニアの甘みを、ヴァージニアがラタキアの旨味を最大限に引き出してくれているのだから。同社のGrouseMoorや、Perfectionよりもさらにヴァージニアを楽しめる直球勝負のtobaccoだ。


時間帯は夕刻から夜。
舌荒れの可能性は中程度、ニコチン酔いの心配はない。
合う飲み物はウィスキー、水、コーヒー。



  1. 生葉芳香 弱←○○○○○○★○○→強
  2. 甘  み 少←○○○○○★○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○○★○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○○○★○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○★○→良
  9. 常  喫 無←○○○○○○★○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強






2014年12月13日土曜日

ヤルヴィの風景

久しぶりのオペラシティ。

12/10~14、武満ホールにてパーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルブレーメンのブラームスチクルスをやっています。4つの管弦楽曲、4つの協奏曲、4つの交響曲を4日間で時系列に。
本当は全て行きたかったのですが、まあそういう訳にも行かず、特に交響曲第2番が聴きたかったので二日目の公演に。

一曲目はハイドンの主題による変奏曲。
続いてクリスティアン・テツラフ演奏のバイオリン協奏曲。
技巧と強烈なパワー、ダイナミックさと繊細の緩急。特に第一楽章のカデンツァは非常に素晴らしいものでした。不勉強にしてオリジナルかどうか分かりませんが、サラサーテを意識したような非常に技巧的なフレーズにあふれていました。

アンコールはバッハ。
アンデルシェフスキといいテツラフといい、21世紀に入って明らかにバッハの解釈がまた新時代を迎えたのだということを印象づけてくれる演奏でした。


さて、ヤルヴィ&ドイツカンマーフィルの交響曲と言えばしばらく前にベートーヴェン交響曲第5番の冒頭の解釈が斬新で話題になりましたが、カンマー(室内楽)という名が示す通り現代のレベルでは比較的小編成のオーケストラが特徴で、やや軽くスピード感とちょっとヒップホップのようなノリもあっていかにも21世紀風。
当たり前といえば当たり前ですが、当代のクラシック音楽家は、指揮者も演奏家もみんなロックやジャズ、ソウルをクラシックと同じように聴いて育っているし、かなり詳しい人も多く、カンマーフィルの演奏家やヤルヴィにもそのバックグラウンドはしっかり出ています。

音楽におけるタイム感ビート感というのは我々の世代が音楽に対して持っている共意識の一つで、これをなくしては音楽が成立しないという時代であることは間違いありません。
クラシックもそれと無縁ではいられないわけで、やはりカラヤン以前と以降では違うし、最近の演奏家はさらにそのリズム感覚は卓越してきています(bpmが正確なビートを刻むという意味ではありません、念のため)。


今回のブラームスも聞き覚えのある重厚で気難しさの漂うのとはちょっとまた違う、スピードとビートにあふれたものでした。
もちろん美しく繊細な情緒性により磨きがかかっていました。

しかしその他に、特に交響曲の中にものすごく何かを言いたげな感じがありました。
言葉にするのはとてもむずかしいのですが、ある風景が何度も何度も繰り返し出てくるのです。
普段CDなどで他のブラ2を聴けば、当たり前の解釈としてブラームスがこの曲を作曲した南オーストリアの湖畔をイメージできます。
木々や草花の囁きや鳥の声、そして風の音、水の匂い。

ヤルヴィの解釈はとても厳密で考証性の高い演奏が特徴です。
しかしなぜかその「南オーストリア」がほとんど出てこなかった。
その代わりにベルルーシやウクライナの草原のような、広くて明るいがなぜか物悲しい光景が広がったのです。

彼はエストニア生まれ、ソ連時代のエストニアの音楽学校を出た後、アメリカのカーティス音楽院やバーンスタインの元で修行していますが……。
ヤルヴィとオケの面々の脳裏に、言葉にならないメッセージとウクライナの平原の原風景が広がっているのを感じたのは僕だけでしょうか。

もう一つ気になったのは、三〜四楽章あたりになるとどことなくマーラー的な狂騒に似た雰囲気すら感じられる箇所がいくつかあったという点です。
もちろんこれは僕にとっては好印象です。
その時代の新しい音楽とは何だったのか、それをブラームスを通じて現代的に我々に伝えてくれるものでした。
もちろんもしもベートーヴェンがこの演奏を聴いたとしても、やはり前衛的だと感じたでしょうし、そしてブラームス自身ベートーヴェンを敬愛しながらも新時代の旗手としてその古典主義的な枠からどうにか抜けだそうとしてもがいていた痕跡を彷彿とさせるものでした。

ヤルヴィの解釈は本当に面白いです。


演奏曲目

12/11[木]19:00

ブラームス:
  • ハイドンの主題による変奏曲 op.56a 
  • ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 
    (ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ)
  • 交響曲第2番 ニ長調 op.73 



[ソリストアンコール]クリスティアン・テツラフ(Vn)
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005より「ラルゴ」

[オーケストラアンコール]
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第3番 ヘ長調
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番 ト短調

2014年12月10日水曜日

藝術の再誕




モダンアートの息の根が止まろうとしている。
葬送行進曲が聴こえる。
葬列が見える。

それは惜しまれることも許されず
墓場にすら向かうことも許されず
ただ焼却炉へと向かっている。

だが喜べ
藝術は人間の手に取り戻されようとしている。

人間が本来神から授かり持つ
美や哲学への憧憬に応える時が来た。

永続性に憧憬し
善に憧憬し
美に憧憬し
深層に憧憬し
哲学に憧憬し
精神性に憧憬し
宇宙に憧憬し
多様性に憧憬し
本質に憧憬し
藝術進化の使命と信頼を取り戻せ。



2014年12月9日火曜日

路傍の石


愛も想いも、笑顔なくしては伝わらない。

それを人に伝えたければ微笑みなさい。

もしも私が微笑んでないならそれは、あなたを試しているから。

愛を受け取る準備ができてない人にとっては、私が愛に溢れているようには見えない。

笑ってるようには見えない。
いや、私の姿さえ見えないだろう。

嫉妬や妬みの炎を燃やしている人にも私の姿は見えないだろう。

なぜなら私は神だから。
私の愛は神の愛。

路傍の石。
気付けばみえるが
気づかない人にとっては
いてもいなくても同じ。

神への愛に満ちるなら
私の姿が見えるだろう。

愛の炎があるのなら
私は微笑んでいるだろう。

自分だけが愛されることを願っても
決して神の姿を見ることはできない。

愛を貫いて初めて
私はあなたを愛するだろう。

そうでなければ
私はただの、路傍の石。

2014年12月8日月曜日

Samuel Gawith BALKAN Flake



サミュエルガーウィズ・バルカンフレイク
使用葉:バージニア、ラタキア
原産国:イギリス
価格:1900円/50g(2014)


生葉の芳香は爽やかでややピート香。カルダモンや胡椒のような芳香も感じる。ラタキア特有の香りは抑えめでバージニアのストーブの香りが勝っている。葉様はモイスト。

火付き、火持ちは申し分ない。サミュエルガーウィスのフレークの中でもSt James Flakeにもまして火持ちは良いほうだと思う。ほぐさずにフレークのまま折って捻って詰めるのが風味も壊れなくていいと思う。

序盤、スムーズ&ライト、そして爽やか。ラベルに「Deliciously Cool」とあるが芳香も喫味もクールだ。ラタキアのキャラクターはそれほど強くなくピート香に似たアロマ。スコッチを連想させる。
ほんのりとした甘みも感じるが、ラタキアブレンドの範囲内。

中盤、爽やかなスパイシーさに交じって甘みが少しづつ増してくる。アロマはそれほど個性のあるものではないが少しずつラタキアのキャラクターが増してくる。

終盤、それまで無個性に近かったアロマにラタキアの薫香と発酵香がどんどん顔を出してくる。しかしあくまでも爽やかで軽やかな甘さは失われない。いや、そもそもこれはラタキアなのか?

このレビューは初冬に書いているが夏向きのtobaccoだと思う。やや涼しくモイストな避暑地の木陰を散歩したくなるようなそんなイメージ。

ところでなぜ「バルカン」なのだろう。ネット上では「バルカンソブラニー」という伝説のtobaccoがその名付けの大元であるという情報が多い。しかしソブラニーのルーツがバルカン半島だからバルカンであるという話もあくまでも「そういうお話」であって、バルカンスタイルの理由を特定するための定説ではない。

スタイルとしてはラタキアとオリエント(主にマケドニア産)、バージニアのミクスチュアをそう呼ぶというが、そうであればイングリッシュミクスチュアの多くはバルカンスタイルになってしまうし、そもそもフレークでバージニア+ラタキアのみの「BALKAN」の説明にはなっていない。
故にバルカンスタイルの定義は未だ非常にあいまいなまま適当だ。

僕も適当なことは書きたくないので断定はもう少し調べてからにしたいが、「バルカンブレンド」という呼び名はもっと古くオーダーミクスチュアの時代に既に存在していたという不確かではあるが得心のゆく情報と自分なりの推測を元に、サミュエルガーウィズのレシピにはもっと確かで理屈の合う意図があると踏んでいる。

BALKANフレークの個性として押さえておきたいポイントとしては

  1. サミュエルガーウィズ(SG)のフレークの中でとりわけ爽やかなスパイスイメージがあること。特に胡椒やカルダモンのヒントは強い。
  2. 生葉芳香に、他のSGの葉にはない「ピート(泥炭)香」がすること。ストーブにピートを使っているのはほぼ間違いないだろう。
  3. 逆にラタキアの個性に乏しいこと。
  4. レシピにオリエントが含まれていないこと。

がある。

事実だけ見ればスパイスもピートもバルカン半島には全く関係ない。
ラベルにはエーゲ海を中心にギリシャからトルコにかけての地形があしらわれているが、バルカン半島の中心とは微妙にずれているし、ラタキアの主産地であるキプロスは表示さえされていない。
けれどもこの爽やかさとクールな味わいは確かに北のものというよりは南の風を感じるし、伝統的なイングリッシュブレンドよりはずっとオリエンタルな風味(軽さ)を醸し出している。少なくともイギリス人を含む北ヨーロッパ人が、オリエントやラタキア、スパイス風味の葉をエーゲ海のイメージに重ね合わせ、これらから醸しだされる爽やかで軽やかな個性を「バルカン風」と呼んでマイミクスチュアをオーダーした時代があったとしてもさほど不思議ではない。
それを最初にパッケージネーミングしたのがバルカンソブラニーであることはともかく、時を経てオリエント葉なしでバルカン風味を復活させるというサミュエルガーウィスの意気が込められていたとすれば……。

僕はこのBALKANに使用されている「ラタキア」と称している葉は、実はオリエント葉を使用せず(ラタキアはオリエント葉を使用する)、つまり実はラタキアではなく、ヴァージニアやバーレイを独自製法で(例えばらくだの糞の代わりにピートで)ラタキア風に仕上げたのではないか?と、これも無責任な憶測に過ぎないが、ピーティなアロマと味わいからはそんな風に読み取れるのだった。

もちろんそんな面倒な妄想をしなくても純粋に十分に美味いtobaccoだ。

ともかくも初めてサミュエルガーウィズのフレークを試してみたい人、ラタキアがニガテな人にもとっつきやすいと思う。舌荒れの心配はほぼない。St James Flakeと並んで常喫性は高い。
時間帯はデイタイム〜夜。合う飲み物はコーヒー、ウィスキー、水など。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○○★○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○○○○★○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○○★○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○★○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○○★○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○★○○→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○○★→有
  10. 個  性 弱←○○○○○★○○○→強




2014年12月4日木曜日

Davidoff Royalty Mixture





ダビドフ・ロイヤルティ・ミクスチュア
使用葉:オリエント(トルコ葉)、ヴァージニア、ラタキア
原産国:デンマーク(オーリックOEM)
価格:3800円/50g(2014)

オリエント系ミクスチュアの上質なtobacco。


開缶すると、やや厚めの中蓋の下に非常にきれいなリボンカットが詰められている。
生葉の香りはラタキアの香りだがそれほど強くはない。それ以外の着香は感じられずいたってマイルドだ。
葉様はオレンジバージニア、明るいオリエント葉が目立ち、そしてほんのり黒いラタキア。全体的に乾燥しており、パイプに無造作に詰めても火付き火持ち共に非常に良い。




喫味は終始、スムース&マイルド。
序盤はバージニアの程よい甘みとtobaccoらしいほのかなアロマが支配する。バイトもなくあからさまに主張するものはない。
中盤も喫味は変わらずマイルドだが、アロマに次第に香ばしさが増してくる。おそらくオリエント葉の個性であろうシガーライクなアロマが交じって陶酔感が顔を覗かせる。
終盤になってやっとほんのりとラタキアがキャラクターを主張し始めるが、終始やさしいしかしちょっと乾いた喫味とアロマが最後まで続く。
終焉の余韻は殆どない。


ところで国内のネットレビューを読むとこのtobaccoの評判の悪さが目立つ。おそらく価格に比して味わいの個性がなかなか感じられないためではないかと思われる。

実際にはシルキーで上品な美味いtobaccoだ。
価格以外は全ての人に薦められる。
パイプ初心者も上手に美味しく喫えると思う。しかしそのポテンシャルは初心者向けというよりはシガーもパイプも楽しめる上級者向きだろう。
ただし、日頃バニラや着香キャベンディッシュなどどぎついパイプ葉に慣れてしまっていると、ワンボウルではこのtobaccoの魅力はなかなか見えづらい。

パイプ喫煙者向けというよりは、普段はダビドフのプレミアムシガーを嗜む人へ、たまさかのパイプスモーキングタイムのために用意したのでは?ともとれるほど、シガーにも通じるスムーズさ、アロマの抑えの効いた心地よさ。もちろんシガーのそれに比べればほんの心持ち程度だが、ルームノートにも確かにシガーに通じる軽やかさ、華やかさがある。それは着香で得られるものではなく、明らかに葉そのものの上質なチョイス、ブレンドによるものと思われる。
それは良くも悪くもシガー的アプローチであり、それによって仕上がるマイルドさと上品さは、確かに日頃からパイプオンリーで暮らしているといささか物足りなさを感じるかもしれない。

しかし燻らすごとにダビドフのレシピの底力を感じるのは確かだ。
それは明らかにオリエント(トルコ煙草)の配合にあると思う。
ボウルを重ねる毎に、実はオレンジバージニアよりもずっとオリエント葉が主張し、このtobaccoのキャラクターを支配していることに気がつく。

エルキュール・ポワロの中にトルコ煙草を喫う男の話が出てくる。男が喫うトルコ煙草はジタンやゴロワーズのような黒煙草ではなく、ロイヤルティミクスチュアに使われているような浅煎りの黄金葉である。そしてこのゴールデンターキッシュはtobaccoの黄金時代、最上級シガレットの一つだった。

ロイヤルティミクスチュアの欠点はとにかく国内価格が高価だということ。プレミアムシガーと比べれば安いかもしれないが、パイプ葉の中では飛び抜けて高い。
一喫の価値はあるがパイプスモーカーに広く支持されるとは思えない。もちろんダビドフにとってはそれでいいのだろう。

ニコチン酔いの心配はなし。
よほど乱暴に喫わない限り、舌荒れの心配は皆無。
常喫性はとても高い。
合う飲み物はブランデー、ウィスキーなど。

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 弱←○○○○○★○○○→甘
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○★○○○○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○★○○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○★○○○○→強
  7. 舌アレ度 弱←○★○○○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○○○○○○★→良
  9. 常喫可能 無←○○○○○○○★○→有
  10. 個  性 弱←○○○○★○○○○→強