アーティストでデザイナーでヒーラー、サトチヒロのまぜこぜブログです。絵や芸術の話、制作過程、氣や魂やエネルギーの話、音楽の話、パイプ、オールドカメラ、クルマの話。 /アートストンギャラリー(銀座)所属
2015年2月2日月曜日
サントリーのまっすぐなウイスキー 〜Suntory CREST 12〜
サントリークレスト12年
ブレンデッド
1989年、サントリー(壽屋)の90周年を記念して「響17年」と共に発売されたサントリーの高級ブレンデッド・ウイスキー。それまで「ローヤル」が頂点だったサントリーのブレンデッドウイスキーラインナップの上位、いわゆる「ブレンデッドのヴィンテージ物」として2006年まで売られていました。その後ローヤルや響にも12年ものがラインナップされたことで販売終了、今はデッドストックだけしか手に入らないと思います。
このクレストも父が長らく酒棚に放置したままにしていたもの。
父が今年家を離れ特養に入所することになったため、身辺整理の機会に譲り受けました。
といっても元々酒は一滴も飲まない人で、なのに何故かブランデーやウイスキーの贈答が多く、棚にはレミー・マルタンやカミュ、オールド・パー、ジョニ黒など、当時の高級酒が何本も何年も飾り物になっていたのでした。
僕の洋酒の先生はこれらの飾り物達でした。20代〜30代、帰省する度に惜しげもありがたみもなくこれらのボトルを我が物顔で空けてました。
父の下戸のおかげで、息子がブランデーやウイスキーの味を正しく覚えることができたと言っても過言ではありません。深謝。
クレストはその中で未開封のまま最後まで残っていたボトルのひとつでした。
発売当時の価格を見ると5000円。しかも酒税法改正後でウイスキーが安くなってからの価格ですから、国産ウイスキーとしてはかなり高級な部類です。
素性は素直で、個性はそれほどないけれどヴィンテージモルトの良さを活かした良質なウイスキーです。今となっては決して高級な感じはしません。ニッカで言うところのスーパーニッカぐらいかなあといったところ。
第一印象はサントリーの常でややグレーンのアルコール臭さが気になりますが、しばらくすればモルトの香りが開き、奥行きのあるフルーティさとキレの良い甘さが心地良いウイスキーの顔を出します。サントリーにしては例外的にピート香を感じることができ、ウイスキーらしく、ストレートでもスッキリとした味わいを楽しむことができます。そしてマスカット風味と奥行きがあり余韻もしっかりとしています。白州モルトの印象が強いです。
ウイスキー通ならブレンデッドジャパニーズの最高峰に「響」を挙げる方も少なくないと思います。クレストはその響12年に系譜的に繋がるウイスキーだと感じます(味わいは全く異なります)。
思うに、このクレストを境にサントリーのウイスキーの哲学、信念というものがかなり変化したのではないでしょうか。
サントリーのウイスキーは長年、ニッカと較べるとウイスキーそのものを味わうというより、やはり「日本料理に合うこと」「日本人の繊細な味覚に合わせる」ことを再優先にしてきた感があります。故に飲み方のメインは水割りやハイボール。
角やホワイト、オールドはそんな時代を長いこと引きずってきました。水割りやハイボールにすると美味いがストレートではとても飲めないという、誰もが一度はウイスキーに感じてきたジレンマです。
それが逆に「水で割っても腰砕けがない」という不思議なサントリーマジックも生み出したのも事実ですが。
しかし現在の山崎や響はそういったかつてのサントリーの「ご提案」は影を潜め、ウイスキーをしっかりと味わって欲しいという哲学への変化を感じます。
水で割るよりストレートの方が断然美味いのです。
シングルモルトやブレンデッドをストレートで味わえるというのは、日本人の舌が変わってきたせいもあるでしょう。
しかしそれだけではなく、やはりジャパニーズ・ウイスキー自身も変化(進化)しました。
クレストは、そんな過渡期に誕生したブレンデッドにおける初めてのヴィンテージです。当時の5000円というかなり高い価格帯やバブルの時代の雰囲気を敢えて無視して「ジャパニーズウイスキー」という括りで見れば、クレストは何の曲芸も施さず、素直で良心的なブレンドをきちんとした「普及版」ヴィンテージ・ブレンデッドではなかったかと思うのです。
あんまり普及はしなかったみたいですが。
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