2014年7月14日月曜日

Samuel Gawith Black XX





サミュエルガーウィズ ブラックダブルエックス (UK)
RopeCut
バージニア



いくつかの単語で表現すると、強烈、プリミティブ、野蛮、豪快、そして絶品。

まずは葉様…というより容貌。
ロープ(縄)タバコ。缶を開けて出てくる姿は事前に分かってはいてもやはり度肝を抜かれる。表面はつやがありほんのり油っぽい。

ロープはパイプ葉の中で最も古いスタイルと言われている。由来は様々だが、葉巻に似ていて、Tobaccoの葉をよって縄状にしている。ほぐすとフィラーとラッパーに分かれている事に気がつく。ただ葉巻と違うのは、とにかく湿っていて重いこと、そして長いこと。製造時は本当にロープのように長くロールして保管、缶に入っているのはそれを短くカットしたもの。

芳香は、どことなくセロリを思わせる爽やかでスパイシーな香り。けれど熟成しているせいか野沢菜の漬物のような隠れ香もする。tobaccoらしい香りは皆無。

アニスでキャベンディッシュしているとのことだが、それが葉や茎の絞り汁であるか、種のエキスであるか、はたまたアニスオイルであるかは分からない。表面のテカリはオイルだが、アニスオイルだろうか。「アニスオイルにドブ漬けして」という説明もサイトで見かける。
ただ、セロリやパセリに似た香りが強く、いわゆるアニシードの香りもしないわけではないが熟成香に隠れてやはり爽やかな香りが勝っていることや、後述するオイルの焼ける匂いが全くアニスとは似ても似つかない事などから、やはりハーブとして葉や茎の絞り汁を使っているのかもしれない。


これをナイフ等で輪切りにしてパイプに詰める。本来ならパイプの深さに合わせて切ったものをそのまま入れて喫するのだそうだが、通気性がよろしくないのでまず無理。もう少しこまめにスライスしてほぐして使う。
切った感じはまさに「濡れた葉巻」。

通常のパイプで約7mmを2つ。手で適当にほぐしていくが、思ったよりは容易で、ほろほろとほどけていく感じだ。あまり丁寧にほぐさなくても良いが、火持ちが気になる人はほぐして一枚一枚薄く伸ばした方がいいかも。

ほぐした葉の色や手触りは、とてもやわらかい都こんぶ。
これをしばらく部屋の湿度に馴染ませてからパイプに詰めてゆく。ロープ状の時に感じたほどにはモイストではない。要するにオイルが染みている状態。

火付きは良い。火持ちは決して良い方ではなが、丁寧にラブド(ほぐし)にしてなじませると意外に良くなる。火持ちに粘りはないのでこまめなパフィングやタンピングは要る。

その日喫う分の量を予めほぐしてパウチなどに入れて自然乾燥させておくと火持ちに関しては全く他のtobaccoと遜色はないなとは思ったが、考えてみればこのロープtobaccoを一日に何ボウルも常喫できるとも思えないのでやめておくことにした。

序盤、喫味は渋い。豪快というか乱暴というか、甘みとかクリームとか、普段パイプ葉に抱きがちなイメージは全く出てこない。とにかく渋い。若干の爽やかさが渋みの中から覗く程度。この爽やかさは明らかにアニスのものだ。

それよりもアロマが個性的だ。いや、個性的と言うのだろうか。tobaccoの匂いではない。ステーキや焼き肉。たぶん油の焼ける匂いだと思う。「なんじゃこりゃ!」だ。そもそもアニスオイルは焚いても決してこんな匂いにはならないし。
進むに連れて少しずつマイルドにはなってゆくけれど、ステーキ臭がダメな人はこのTobaccoはやめておいた方がいいかも。

最初は渋いながらなんとなく爽やかさも感じる喫味だったが、中盤からボディブローのように鈍くヘヴィなパンチが効いてくる。とにかくニコチンが強い。これはロブストのような太くて強いシガーの喫後感に似ている。酩酊感がどんどん深くなる。私はニコチン耐性は高い方なのでパイプ喫煙ではニコチン酔いは殆ど起こさないので平気だが、普段あまりヘヴィに吸うのでない方は、空腹を避け、火持ちを気にせず休み休み喫したほうがいいと思う。

中盤から終盤にかけて、非常にねっとりした喫味に変わってゆくが、お世辞にも味のあるたばことは言い難い。
ただ、初めは大味なTobaccoだなあと感じていたが、よくよくアロマの状態に気を配って燻らしていると、突然「ここだ!」というポイント、クライマックスがある。このクライマックスは主にアロマから得られる。

例の油の焼けるような匂いがいつのまにか消えて、ウッディでなんとも神秘的なルームノートが周囲を満たす。そして深い満足感が満ちてくる。
ここがイギリスtobaccoの不思議というか持ち味なところで、良く言えば懐が深い、悪く言えば分かりにくい。


こういうtobaccoを喫するといつも思うのは、tobaccoとは一体なんなのか?という疑問だ。
嗜好品なのか趣味なのかアロマテラピーなのか薬なのか毒なのか、よく分からなくなってくる。

ヨーロッパ人がtobaccoを発見する以前は、インディアンはtobaccoを単なる嗜好品だけではなく神聖な植物で、儀式の時に焚いたり喫してトランス状態を作り出したと言われる。
それがマリファナでもなくコカでもなくtobaccoだったという点は、現在のわたしたちに示唆を与える。人によっては「当時のtobaccoの品種はもっと幻覚作用があったのだ」(アルフレドダンヒル)という人もいる。しかし私はちょっと違うのではないかと思う。

例えばホワイトセージという葉がある。薬理的に言うと幻覚作用も覚醒作用もない。しかしこれもインディアンの儀式に使われる重要なものだ。これによってやはりトランス状態を作り出すきっかけになる。

使い方はスマッジングといって、刈り取って乾燥させたものをきつく束ねて火を付け、ルームノートを作りだす。tobaccoもスマッジングで使われることがあったので似ている。
セージはとんでもない大量の煙が出るが、その煙は大地や人の浄化の意味がある。

そしてその煙は素晴らしいアロマを提供すると同時に、スマッジングすると人に神聖で敬虔な気持ちを抱かせ瞑想状態になる。場合によっては激しい頭痛の原因にもなる。
それは決して幻覚とか忘我の状態ではなく、自己の持つ精神性のある一部分をブーストし、神や自然と一体になるきっかけを与えてくれる媒体のような役割。
日本やインドのお香とも似ている。

tobaccoも同じで、友情の儀式、和平の儀式、大地への感謝の儀式などで使われたという。それはいたずらに忘我に至るのではなく、煙、つまり副流煙のアロマとルームノートが人間の精神をブーストし、リラックスと神秘体験を通じて敬虔と智慧、友愛と平和に誘ってくれる存在であった。

ブラックXXはそんな古いtobaccoの名残を残している。余計な着香もなく、かすかにアニスの痕跡。熟成された原始的で根源的なアロマ。豪快のち瞑想に誘う深い満足感。
人には積極的におすすめしないが、個人的には非常に気に入った葉の一つ。ただし出だしは焼き鳥臭なのでご注意を。
でも美味しく吸えます明らかに。チャレンジする価値はある。ハードボイルドなtobaccoだ。

舌アレはそれほど強くはない。ブローもドローもそれほど気を使わなくても良い。
むしろ煙は多めに盛大にスマッジングするようにパフしたほうがいい。
いつも書いているが、伝統的イギリスタバコのようにモイストなものになればなるほどちまちましたスモーキングはうまくいかない。ボウルの温度に気をつけさえすれば、煙は多めの方が味わいがよく分かる。

それと注意点として、独特のアロマが喫後もパイプに残るので、繊細な香りのtobaccoとパイプを兼用しない方が良い。できれば専用のパイプが望ましい。

時間帯は問わないが、重いので空腹時は避けたほうがいいかも。
まさに焼き鳥、焼き肉、ステーキの食後にいい。ウォッシュタイプやブルーチーズの後にも良い。
合う飲み物はコーヒー、濃いお茶、蒸留酒、甘い飲み物など。
1900円/50g(2014)

  1. 生葉芳香 弱←○○○○★○○○○→強
  2. 甘  み 少←★○○○○○○○○→多
  3. 味の濃淡 淡←○○★○○○○○○→濃
  4. 熟成感  若←○○○○○★○○○→熟
  5. アロマ  淡←○○○○○★○○○→濃
  6. 満喫感  弱←○○○○○○○○★→強
  7. 舌アレ度 弱←○○○★○○○○○→強
  8. 火持ち度 悪←○○○★○○○○○→良
  9. 常  喫 無←○★○○○○○○○→有
  10. 個  性 弱←○○○○○○○○★→強








0 件のコメント:

コメントを投稿